2018-01-01から1年間の記事一覧

No. 136 栄養療法 ー入院高齢者の低栄養についてー

栄養療法 ー入院高齢者の低栄養についてー はじめに “hospital malnutrition”という言葉があることからもわかるように、入院患者の栄養不良の発症率は3~5割と言われており、特に回復期リハ病棟では低栄養の発症率が高いという報告もあります。そもそも、な…

No. 135 肘関節の脱臼骨折のリハビリテーション

肘関節の脱臼骨折のリハビリテーション 肘関節脱臼骨折の特徴 肘関節の脱臼は肘の外傷の11~28%を占める それは10歳未満の子供の最も一般的な脱臼であり、成人では肩に次いで二番目に多い 年間の発症率は6/10万人 肘関節脱臼の90%が後方もしくは後外側への脱…

No. 134 薬の副作用のみかた

薬の副作用のみかた uekent.hatenablog.com No. 41でも取り上げましたが、どんな薬でも、意図していなかった好ましくない「できごと」(=事象)が起こる可能性があります。そのようなできごとを「有害事象」といいます。有害事象には、飲んだ薬が原因ではない…

No. 133 膀胱留置カテーテル抜去について

膀胱留置カテーテル抜去について No.16にも書いた膀胱留置カテーテルについてのより詳しいまとめです。 uekent.hatenablog.com I. 留置カテーテルの抜去に向けた取り組みの先駆的研究 上田 朋宏:老人総合病院における入院患者の排尿管理について. 泌尿紀要3…

No. 132 めまい

めまい 「めまい」を訴える患者さんは少なくありません。この時大切なのは、「めまい」ということばが具体的にどの様な症状なのかを聞くことです。視界がぐるぐると回っている「回転性めまい」の場合や、起立性低血圧などによる意識消失の一歩手前「前失神」…

No. 131 糖尿病性足病変

糖尿病性足病変 褥瘡に似て非なるものとして糖尿病患者に起こる足の潰瘍があります。末梢神経障害、末梢血管障害、感染症のいずれか、もしくはこれらの組み合わせによって起こります。 末梢神経障害が主な原因による皮膚潰瘍は、おもに関節の突出部に生じま…

No. 130 高齢者の脱水

高齢者の脱水 体の中の総水分量は年齢とともに減少します。細胞外液(≒血管の中を流れている水分)の量は高齢者でもそれほど減少しませんが細胞内液が減少します。これは、年齢とともに水分を多く貯蔵できる筋肉の細胞が減少し、水分を維持しにくい脂肪細胞が…

No. 129 骨盤骨折

骨盤骨折 骨盤は脊柱の根元にある強固な輪を形成する骨です。骨盤の骨折はまれで、成人の骨折のうちの3%を占めます。多くの原因は外傷であり、自動車との衝突などの高エネルギー外傷です。骨盤の近くには重要な血管や臓器が存在するため、骨盤骨折では多量の…

No. 128 点滴をとめるコツ

点滴をとめるコツ 回復期リハ病棟に入院中の患者さんでも点滴が必要になることがしばしばあります。全身状態が許せば点滴したままでもリハは可能な限り行わなければいけません。この時、点滴刺入部に負担がかからないように配慮し、「引っかかって点滴が抜け…

No. 127 プレゼンテーションスキル

プレゼンテーションスキル No.26でカルテの書き方について触れました。 uekent.hatenablog.com カルテ記載と共に重要な技術として「プレゼンテーションスキル」があります。つまり人前で発表する技術のことです。医療現場で働いていると、多職種が集まって行…

No. 126 圧損傷(いわゆる褥瘡)について

圧損傷(いわゆる褥瘡)について 1961年にKosiakは、わずか70mmHgの圧力でも2時間連続で加わることで、ラットの筋肉に中等度の組織学的変化を生じたことを報告しました(1)。さらに1974年、Dinsdaleはせん断力が加わると血流低下を引き起こすために必要な圧力は…

No. 125 自動車運転再開について

自動車運転再開について 脳卒中やその他の病気になっても回復期リハ病棟退院後には自動車運転を再開したいと希望される患者さんが少なからずいます。退院後の生活の質に大きく影響することもありますので、可能ならば再開できるように支援したいですが、もし…

No. 124 リハビリテーションにおける超音波

リハビリテーションにおける超音波 INTRODUCTION 超音波は人間の可聴域の20KHzを超える音です。近年、画像検査としての超音波の使用は、筋骨格系および末梢神経系障害の評価に不可欠となっています。従来の画像技術と比較すると超音波は、その場ですぐに行え…

No. 122 原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症 原発性アルドステロン症とは、副腎からアルドステロンというホルモンが勝手に過剰に作られ、その作用で高血圧などの症状が生じる疾患です。高血圧の約5~10%の原因になっています。また治療してもなかなか治らない高血圧(治療抵抗性…

No. 122 バランストレーニングが記憶力や空間認知能力を改善する

バランストレーニングが記憶力や空間認知能力を改善する Rogge, AK, et al. “Balance Training Improves Memory and Spatial Cognition in Healthy Adults.” Scientific Reports 7, no. 1 (Dec 2017). https://doi.org/10.1038/s41598-017-06071-9. 運動が認…

No. 121 誤嚥性肺炎のABCDEアプローチ

誤嚥性肺炎のABCDEアプローチ 「治療」という医学雑誌の最新号に「終末期の肺炎」という特集記事がありました。「終末期」というと、がんをイメージする人が多いと思います。しかし最近は、がんでない疾患(非がん疾患)の終末期・緩和ケアが注目されつつあ…

本の紹介:「インフルエンザ なぜ毎年流行するのか」

番外編 本の紹介:「インフルエンザ なぜ毎年流行するのか」 インフルエンザ なぜ毎年流行するのか (ベスト新書) [ 岩田健太郎 ]ジャンル: 本・雑誌・コミック > 文庫・新書 > 新書 > その他ショップ: 楽天ブックス価格: 885円 過去のミニレクチャーでも感…

No. 120 急性胆嚢炎

急性胆嚢炎 急性胆嚢炎は、食後数時間してから吐き気や嘔吐、上腹部の痛み、悪寒や発熱などの症状が出現する病気です。胆石をもっている人に起こりやすく、胆石が胆管にはまって、そこに細菌感染が起きて発症します。9割はこの結石が原因で起こるのですが、…

No. 119 体位ドレナージは有効か?

体位ドレナージは有効か? 体位ドレナージとは、体位によって喀痰を排泄する方法です。100年以上も前からある方法です。姿勢をあれこれ変えることで喀痰を中央の気管へ移動させて体外へ排泄させます。例えば右の肺に喀痰がある場合は左を下にした側臥位をと…

No.118 外傷性脳損傷Traumatic Brain Injury

外傷性脳損傷Traumatic Brain Injury : TBI PATHOPHYSIOLOGY 一次的な傷害は衝撃そのものによるもので、受傷後数時間以内に起こります。びまん性軸索損傷(DAI)は、衝撃時の加減速、回転力、および白質と灰白質との間の組織密度の差によって生じる軸索のせん…

No. 117 呼吸数 ー4番目のバイタルサインー

呼吸数ー4番目のバイタルサインー 入院している患者さんは毎日「バイタルサイン」を測定されます。「バイタルサイン」には、体温、心拍数、血圧、そして呼吸数が含まれます。最近は呼吸数の代わりにパルスオキシメーターで測定される経皮的動脈血酸素飽和度S…

No. 116 脳卒中患者でのイメージトレーニングの効果

脳卒中患者でのイメージトレーニングの効果 イメージトレーニングは、プロスポーツ選手の間では普通にトレーニングに取り入れられています。イメージトレーニングが脳卒中後の上肢機能の改善にも有効かどうか検証した論文を紹介します。 Motor imagery train…

No. 115 大動脈弁狭窄症

大動脈弁狭窄症 心臓には4つの部屋があり、全身から帰ってきた血液が大静脈から右心房へ集まり、右心室へ行き、肺へと出てゆき、二酸化炭素を出して酸素を取り込んだ後、左心房へと戻り、左心室へ行き、最後に大動脈へと流れて全身へ血液が供給されます。こ…

No. 114 反復練習が脳卒中後の筋力におよぼす影響

反復練習が脳卒中後の筋力におよぼす影響 脳卒中によって麻痺が起こると手足が動かしづらくなります。その麻痺がどの程度の麻痺かを表現する方法として、複雑な動きがどの程度できるのかという観点から点数をつける評価方法と、単純に筋力で評価するという方…

No.113 低カリウム血症

低カリウム血症 低カリウム血症はありふれた検査異常です。3.6mEq/L以下の低カリウム血症は入院患者の21%に認められるという報告があります。ほとんどの場合は特に症状もなく、カリウムを補給したりする必要もありませんが、中には急いで治療する必要のある…

No.112 不明熱(FUO)

以下は、Harold W. Horowitz : PERSPECTIVE; Fever of Unknown Origins or Fever of Too Many Origins? NEJM. JAN 17, 2013.の要約です。 不明熱(FUO : Fever of Unknown Origin)とは、38.3 ℃を超える発熱が3週間持続しているにもかかわらず、入院しての1週…

No. 111 インフルエンザ迅速検査について

インフルエンザ迅速検査について インフルエンザの季節が近づいてまいりました。院内での流行は避けたいところですが、起こるときには起こります。早期発見のためにインフルエンザの迅速検査キットを用いることがあります。しかしこの検査にはいろいろと問題…

No. 110 脳卒中患者にも筋トレは有効

脳卒中患者にも筋トレは有効 リハ業界では過去にさんざん議論になった問題のひとつに「努力を要する活動や筋トレは、脳卒中片麻痺患者に有益か?それとも痙性を増強してしまい有害か?」というものがありました。これについては「筋トレは脳卒中片麻痺患者の…

No. 109 トラゾドン

トラゾドン 高齢者の不眠に対してベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使用することの危険性については「No.60 高齢者に睡眠薬は安全か?」で述べました。その時、トラゾドンという薬についても少し触れましたが、今回はこのトラゾドンについて掘り下げます。 トラ…

No. 108 脳卒中片麻痺患者にとってより効果的な立ち上がり訓練

脳卒中片麻痺患者にとってより効果的な立ち上がり訓練 毎日行っている病棟での立ち上がり訓練、回復期リハ病棟では多くのところで行われています。せっかくやるならより効果的な方法で行いましょう。今回紹介する論文は、脳卒中後の片麻痺のある患者さんを対…