文献紹介:人工呼吸器装着下でのカフ上発声法

McGrath B, et al. Above cuff vocalisation: A novel technique for communication in the ventilator-dependent tracheostomy patient. J Intensive Care Soc. 2016 Feb; 17(1):19-26

 

人工呼吸器から離脱できず長期間の使用が必要となり、気管切開が施行されると声帯に呼気が通過しないために発声ができなくなります。この文献では気管カニューレのカフ上吸引チューブから酸素を送気することで呼気の代わりにして発声する方法が紹介されています。

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発声の手順は以下の通りです;

1.カフが正常に膨らんでいることを確認
2.酸素投与チューブをカフ上吸引へ接続する
*酸素は加湿する

3.酸素を2-5L/minの範囲で開始、最大5L/minまで
4.口腔内吸引を行い痰を除去する
5.訓練終了後は酸素チューブを外す

 

患者の意識と認知機能が保たれており、指示が理解できることが必要です。また長時間酸素を流すと乾燥するため短時間に留めます。起こりうる合併症としては、気管カニューレが誤って皮下に挿入されていたまま実施して皮下気腫を生じた例と、誤ってカフ拡張チューブに送気してカフが過拡張し気管拡張した例が報告されていますが、正しく施行すれば大きな危険なく実施可能で、コミュニケーションが取れることによる患者と介護者のQOLの向上が期待できます。