文献紹介:介護施設における除菌処置の効果

Decolonization in Nursing Homes to Prevent Infection and Hospitalization Loren G. Miller, M.D. et al. NEJM 2023; 389: 1766-1777 高齢介護施設の入所者は、感染症にかかり入院するリスクが高く、また多剤耐性菌を保有するリスクも高いことが知られて…

文献紹介:歩きと車椅子利用での転倒や生命予後の違い

Comparison of Fracture Among Older Adults Who Are Ambulatory vs Those Who Use Wheelchairs in Sweden JAMA Network Open, Feb 13, 2023;6(2) Kristian F. Axelsson et al 加齢や疾患の影響により転倒リスクが高まると移動方法を歩行から車椅子へと変更…

文献紹介:人工呼吸器装着下でのカフ上発声法

McGrath B, et al. Above cuff vocalisation: A novel technique for communication in the ventilator-dependent tracheostomy patient. J Intensive Care Soc. 2016 Feb; 17(1):19-26 人工呼吸器から離脱できず長期間の使用が必要となり、気管切開が施行さ…

入院してすぐに退院時サマリを書こう

急性期病院での診療では、目の前で起こっている事態を解決するための検査や治療が行われます。とにかく命を救う、バイタルを安定させて病態を上向かせる、というこを考えて診療が行われます。 一方で、回復期リハビリテーション病棟で日々診療・ケアをしてい…

論文紹介:New horizons in multimorbidity in older adults

New horizons in multimorbidity in older adults Alison J Yamall et al. Age Aging. 2017 Nov; 46(6): 882-888. マルチモビディティ(多疾患併存状態)という概念が最近注目を集めており、最近、英国国立医療技術評価機構(NICE)がマルチモビディティに関する…

新型コロナウィルス感染症後のリハビリテーション

以下はPhysio-pedia というサイトの COVID-19: Post-Acute Rehabilitation という記事のほぼ全訳です。 はじめに 現在、世界の国々はCOVID-19パンデミックの様々な段階にありますが、多くの国が「次」のフェーズへ進んでいます。この疾患の患者は長期的な機…

骨折の保存療法の一般原則

前回に引き続き、Up to Date のほぼ全訳です。 General principles of definitive fracture management Authors:Anthony Beutler, MDStephen Titus, MD Section Editors:Patrice Eiff, MDChad A Asplund, MD, MPH, FAMSSM Deputy Editor:Jonathan Grayzel, M…

高齢者総合機能評価

Up to Dateという様々なトピックについて最新の論文をもとにまとめたサイトの高齢者総合機能評価の項のほぼ全訳です。 はじめに 高齢者の機能障害や認知症は、ともすると見逃され十分な対処がなされないことが少なくありません。しっかり評価して状態を把握…

No. 172 大腿義足;その他の部品

多軸回転ユニットは複数軸での軸回転を可能にします。一般にはトルクアブソーバーと呼ばれます。地面にしっかりと足部が接地した状態で義足をねじることが出来ます。荷重をやめると元の位置に戻ります。これはゴルフの際のねじれる動きを容易にします。内骨…

No. 171 大腿義足の膝継手

膝継手は機能レベルに応じて分類されます。とてもシンプルな設計のものから、コンピュータを内蔵したものまで様々なものがあります。最適な膝継手の選択にはさまざな要素を考慮する必要があります。患者の活動レベルや残存肢の長さ、近位筋の筋力と制御能力…

No. 170 義足の足部

義足の足部パーツは多種多様なものが市販されています。様々な素材のものが複数のメーカーで製造されています。それぞれの足部に固有の特徴がありますが、ここでは足部の分類ごとに、利点と欠点について説明します。義足の足部の分類方法は多数あり、今回は…

No. 169 義足の骨格構造(内骨格と外骨格)

義足の各パーツをつなぎ合わせるフレーム構造には、外骨格と内骨格構造のふたつがあります。外骨格構造はソケットから下へと硬質のプラスチックであしの外観構造を作成し内部を軽量の素材で埋めたものです。この構造は最近あまり使われなくなっていますが、…

No. 168 義足のインターフェイス

残存肢と義足のソケットをつなぐための装置(=インターフェイス)には、硬性のものと軟性のものがあります。硬性インターフェイスの例としては、吸着式ソケットで、皮膚とソケットが直接接触するタイプのものがそれにあたります。ただし、現在は剪断力や衝撃力…

No. 167 義足のサスペンション

サスペンションは義足を残存肢へ接続するための手法です。サスペンション機構にはいくつかあります。サスペンションの良否は義足が上手に使用できるがどうかに関わる重要な要素です。サスペンションがうまくいかないと、切断患者は義足をうまくコントロール…

脳卒中患者の歩行能力の正確な予測は、脳卒中後72時間以内に可能か?

Is Accurate Prediction of Gait in Nonambulatory Stroke Patients Possible Within 72 Hours Poststroke? The EPOS Study 脳卒中患者の歩行能力の正確な予測は、脳卒中後72時間以内に可能か? J. M. Veerbeek, MSc, E. E. H. Van Wegen, PhD, B. C. Harmel…

No. 166 大腿切断:ソケットデザイン

義足のソケットは残存肢と義足とつなぐためのプラットフォームとして機能します。皮膚とソケットが直接接触する場合もありますが、多くは皮膚とソケットの間にライナーなどがインターフェースとして用いられます。ソケット自身にもサスペンション機構がある…

No. 165 大腿切断:義足処方の概要

義足の処方には、必須の要素が確実に含まれるように、系統的なアプローチを行う必要があります。例えば大腿義足に必要な要素には以下のものが含まれます: ソケット インターフェース(シリコンライナーなど) 懸垂装置 フレーム 足部と足継手 膝継手 その他(…

No. 164 新型コロナウィルス感染症に備える

以下の論文の(ほぼ)全訳です。 How Should the Rehabilitation Community Prepare for 2019-nCoV? Gerald Choon-Huat Koh, PhD, Helen Hoenig, MD https://doi.org/10.1016/j.apmr.2020.03.003 ARCHIVES OF PHYSICAL MEDICINE AND REHABILITATION 2019-nCoV…

大腿義足処方の考え方

大腿義足処方の考え方 大腿義足の処方は、患者の現在の機能と、将来獲得すると予想される機能と義足の使用目的あわせて行います。下腿義足との一番の違いは膝継手があることです。膝継手によって安全性と安定性が異なってきます。大腿義足を使用した歩行はエ…

No. 162 大腿切断:義足のトレーニングでの注意事項

筋トレやROMex、持久力訓練のほかに、義足を用いたトレーニングとして、支持基底面内に重心を保つ練習や、義足を装着して立ってバランスをとる練習、ステップ動作練習などを行います。 また、義足の使用開始時にはソックスの使用方法について習熟する必要が…

No. 161 大腿切断:義足装着前段階のリハビリテーション

切断術のあとから実施すべき事には、創傷のケアと治癒、痛みの管理、浮腫の抑制、筋力増強とROM運動の開始、残存肢と義足についての教育、心理カウンセリングなどがあります。 残存肢の浮腫制御の方法には、ソフトドレッシング、弾力包帯、セミリジッドドレ…

No. 160 大腿切断:痛みのマネジメント

切断後の痛みには、基本的に2種類あり、残存肢痛と幻肢痛です。残存肢痛は残存しているあしに限局される痛みで、幻肢痛は存在しないあしの部分に知覚されれる痛みです。幻肢痛は切断後数年経過しても85%の人に認められます。切断部分に痛みはないものの、存…

No. 159 大腿切断:残存肢の皮膚のケア

切断患者にとってスキンケアは最重要課題であり、医療従事者と患者の両方が取り組む必要があります。特に患者自身が毎日皮膚の状態をチェックし、問題が発生したらすぐに解決手段をとる習慣を早期に身につける必要があります。皮膚トラブルは、放置しておく…

No. 158 脊髄損傷 その6 呼吸器合併症

無気肺、肺炎、呼吸不全、胸膜合併症、肺塞栓症などの肺合併症は、脊髄損傷患者の主な死因です。四肢麻痺患者の急性期における換気不全の発生率は74%と高く、AIS AのC5より高位の損傷患者の最大95%で少なくとも一時的に機械的換気を必要とします。 呼吸器…

No. 157 脊髄損傷 その5 自律神経過反射

脊髄損傷では身体の麻痺の他にもいくつかの合併症が生じることがありますが、その中でも特に重要で知っておくべき合併症に「自律神経過反射」があります。 脊髄損傷では運動神経や感覚神経だけでなく、自律神経も障害されます。自律神経には交感神経と副交感…

Hip Fractures in Older Adults in 2019

Hip Fractures in Older Adults in 2019 JAMA. 2019;321(22):2231-2232. doi:10.1001/jama.2019.5453 骨粗鬆症による脆弱性骨折の発生率は加齢と共に指数関数的に増加し、その結果、機能低下や施設入所、死亡、困窮などの悲惨な結果へとつながります。 80~9…

No. 156 リウマチ性多発筋痛症 Polymyalgia rheumatica (PMR)

リウマチ性多発筋痛症 Polymyalgia rheumatica (PMR) リウマチ性多発筋痛症PMRは慢性の炎症性疾患で、くびや肩、おしりの筋肉に痛みが生じ、その周辺の関節のこわばりを特徴とします。PMRの原因はわかっていませんが、冬に発症することが多く、何らかの感染…

No. 155 長谷川式簡易知能評価スケール

長谷川式簡易知能評価スケール 医療従事者であればほとんどの人が「長谷川式簡易知能評価スケール」を知っていると思います。1974年に作成され、1991年に採点基準を見直された改訂版「HDS-R」が現在は広く使われています。9項目30点満点の検査で短時間で認知…

No. 154 DIBキャップについて

DIBキャップについて 排尿障害がある場合、膀胱留置バルーンカテーテルを使用することはなるべく避けて、間欠導尿で自尿を促すことが大原則でした(No. 133参照)。実際に大半の人が膀胱留置バルーカテーテルから離脱することができます。しかし少数ですが自尿…

誤嚥性肺炎 NEJMの総説 2019.2

誤嚥性肺炎 NEJMの総説 2019.2 NEJMに2019年2月に掲載された誤嚥性肺炎に関する総説です。最新の知見がまとめられています。とくに肺炎が起こる仕組みについて、いままでとは異なる考え方が述べられています。誤嚥性肺炎は、独立したひとつの疾患というより…