No. 119 体位ドレナージは有効か?

体位ドレナージは有効か?

体位ドレナージとは、体位によって喀痰を排泄する方法です。100年以上も前からある方法です。姿勢をあれこれ変えることで喀痰を中央の気管へ移動させて体外へ排泄させます。例えば右の肺に喀痰がある場合は左を下にした側臥位をとることで喀痰が中央へ移動します。

 

寝たきりの患者さんは仰臥位(あおむけ)で過ごす時間が多いため、喀痰は背側にたまりやすいです。そのため、背側の痰を体位ドレナージするために腹臥位で寝かせる方法が主にICUの人工呼吸器が付いている患者さんで検証され有効性が示されています。しかし腹臥位は合併症の報告も多く、酸素消費量の増大、皮膚の発赤、顔面の浮腫、低血圧、頻脈などがみられることがあります。また腹臥位への退院変換には人手がたくさん必要です。

 

腹臥位の代わりに、側臥位でも代用可能ですが、45度程度の側臥位では効果はなく、最低でも60度、できれば90度つまりベッドの面に対して垂直、さらに言うと前傾側臥位(つまり90度以上)にすることで効果的な体位ドレナージが可能です。実施時間については統一した見解は今の所なく、通常は3~15分ほど同一の体位を維持します。 

 

さらに適切な体位を取った後の補助手段として、スクイージングという呼吸介助手技があります。これは、呼気(息を吐く)時に、喀痰が貯留している部位の胸郭をしぼるように介助することで、呼気の流速を加速し喀痰の移動を促す方法です。他にもタッピングやバイブレーションなど喀痰の移動を促す手技がいくつかありますが、エビデンスが最もあるのはスクイージングです。スクイージングは、胸郭の呼吸運動の知識をもった人が、患者さんの呼吸にあわせて最適な力で介助して初めて安全で有効な手技になるので練習が必要です。

 

他にも喀痰の排出を促すための手段としては、去痰薬を内服して痰の粘稠度を下げる、ネブライザーで加湿をする、などの補助手段があり、これらも併用することでさらに効果があがります。

 

調べた範囲では、体位ドレナージの効果については人工呼吸器関連肺炎の予防についての論文は多数ありますが、回復期リハ病棟での有効性についての報告は見つかりませんでした。系統的な介入と評価を行えば論文化できるかもしれません。

 

参考:倉原 優 ねころんで読める呼吸のすべて メディカ出版, 2015.