ミニレクチャー No. 81 脊髄損傷 その3:ケアのポイント
脊髄損傷 その3:ケアのポイント
脊髄損傷では運動麻痺が一番目に見える症状ですが、その他にも様々な症状が出現します。脊髄損傷の患者さんで起こりうる、運動麻痺以外の症状とその対応方法についてまとめます。
1. 循環器障害
延髄から脊髄にある血管運動路の遮断によって、徐脈、血圧低下、循環血液量の減少、静脈還流障害、全身浮腫、肺水腫
静脈のうっ滞などが起こり、体動制限されることも加わって血栓ができやすくなります。
Point:バイタルサインチェック、起立性低血圧対策、血栓症予防
2. 呼吸障害
第4頚髄より高位の完全損傷では、横隔神経が遮断されるため呼吸機能が消失します。なので人工呼吸器が必須となります。第4頚髄以下の頸髄損傷では、横隔膜は動きますが、肋間神経が遮断されるため、胸郭の動きが無くなり強い呼吸ができなくなります。それによって気道内分泌物の増加や喀痰の貯留、無気肺、肺炎を引き起こしやすくなります。
Point:口腔ケア、体位ドレナージ、吸引、早期離床
3. 消化器障害
麻痺性イレウスは必発です。胃・小腸・上行結腸の腸蠕動は亢進する傾向にあり、一方で横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸は低下します。そして便秘や急性胃拡張、消化性潰瘍、膵炎などを引き起こします。
Point:体位変換、早期離床、摘便、ガス抜き、食事形態の工夫、下剤の調整
4. 排尿障害
排尿中枢との伝導路が遮断されるので尿閉になります。間欠導尿法や持続導尿法が重要です。詳しくはミニレクチャーNo.78を参照してください。
5. 褥瘡
体動制限がある上に、知覚障害、発汗・失禁による皮膚の汚染・湿潤・体位変換時の摩擦などで褥瘡発生のリスクは非常に高いです。
Point:好発部位の観察、体位変換、除圧、適切なマットの選択、スキンケア、低栄養の予防
6. 関節拘縮
すぐに起こるものではないですが、予防のために早期からの介入が重要です。
Point:日々のケアのなかに他動運動を盛り込む
7. その他
体温調節機能が損なわれることで、異常な高体温または低体温になることがあります。また麻痺した体に異常な痛みを感じることもあります。
Point:室温・風通しなど環境温度に配慮