回復期リハミニレクチャー

No. 172 大腿義足;その他の部品

多軸回転ユニットは複数軸での軸回転を可能にします。一般にはトルクアブソーバーと呼ばれます。地面にしっかりと足部が接地した状態で義足をねじることが出来ます。荷重をやめると元の位置に戻ります。これはゴルフの際のねじれる動きを容易にします。内骨…

No. 171 大腿義足の膝継手

膝継手は機能レベルに応じて分類されます。とてもシンプルな設計のものから、コンピュータを内蔵したものまで様々なものがあります。最適な膝継手の選択にはさまざな要素を考慮する必要があります。患者の活動レベルや残存肢の長さ、近位筋の筋力と制御能力…

No. 170 義足の足部

義足の足部パーツは多種多様なものが市販されています。様々な素材のものが複数のメーカーで製造されています。それぞれの足部に固有の特徴がありますが、ここでは足部の分類ごとに、利点と欠点について説明します。義足の足部の分類方法は多数あり、今回は…

No. 169 義足の骨格構造(内骨格と外骨格)

義足の各パーツをつなぎ合わせるフレーム構造には、外骨格と内骨格構造のふたつがあります。外骨格構造はソケットから下へと硬質のプラスチックであしの外観構造を作成し内部を軽量の素材で埋めたものです。この構造は最近あまり使われなくなっていますが、…

No. 168 義足のインターフェイス

残存肢と義足のソケットをつなぐための装置(=インターフェイス)には、硬性のものと軟性のものがあります。硬性インターフェイスの例としては、吸着式ソケットで、皮膚とソケットが直接接触するタイプのものがそれにあたります。ただし、現在は剪断力や衝撃力…

No. 167 義足のサスペンション

サスペンションは義足を残存肢へ接続するための手法です。サスペンション機構にはいくつかあります。サスペンションの良否は義足が上手に使用できるがどうかに関わる重要な要素です。サスペンションがうまくいかないと、切断患者は義足をうまくコントロール…

No. 166 大腿切断:ソケットデザイン

義足のソケットは残存肢と義足とつなぐためのプラットフォームとして機能します。皮膚とソケットが直接接触する場合もありますが、多くは皮膚とソケットの間にライナーなどがインターフェースとして用いられます。ソケット自身にもサスペンション機構がある…

No. 165 大腿切断:義足処方の概要

義足の処方には、必須の要素が確実に含まれるように、系統的なアプローチを行う必要があります。例えば大腿義足に必要な要素には以下のものが含まれます: ソケット インターフェース(シリコンライナーなど) 懸垂装置 フレーム 足部と足継手 膝継手 その他(…

大腿義足処方の考え方

大腿義足処方の考え方 大腿義足の処方は、患者の現在の機能と、将来獲得すると予想される機能と義足の使用目的あわせて行います。下腿義足との一番の違いは膝継手があることです。膝継手によって安全性と安定性が異なってきます。大腿義足を使用した歩行はエ…

No. 162 大腿切断:義足のトレーニングでの注意事項

筋トレやROMex、持久力訓練のほかに、義足を用いたトレーニングとして、支持基底面内に重心を保つ練習や、義足を装着して立ってバランスをとる練習、ステップ動作練習などを行います。 また、義足の使用開始時にはソックスの使用方法について習熟する必要が…

No. 161 大腿切断:義足装着前段階のリハビリテーション

切断術のあとから実施すべき事には、創傷のケアと治癒、痛みの管理、浮腫の抑制、筋力増強とROM運動の開始、残存肢と義足についての教育、心理カウンセリングなどがあります。 残存肢の浮腫制御の方法には、ソフトドレッシング、弾力包帯、セミリジッドドレ…

No. 160 大腿切断:痛みのマネジメント

切断後の痛みには、基本的に2種類あり、残存肢痛と幻肢痛です。残存肢痛は残存しているあしに限局される痛みで、幻肢痛は存在しないあしの部分に知覚されれる痛みです。幻肢痛は切断後数年経過しても85%の人に認められます。切断部分に痛みはないものの、存…

No. 159 大腿切断:残存肢の皮膚のケア

切断患者にとってスキンケアは最重要課題であり、医療従事者と患者の両方が取り組む必要があります。特に患者自身が毎日皮膚の状態をチェックし、問題が発生したらすぐに解決手段をとる習慣を早期に身につける必要があります。皮膚トラブルは、放置しておく…

No. 157 脊髄損傷 その5 自律神経過反射

脊髄損傷では身体の麻痺の他にもいくつかの合併症が生じることがありますが、その中でも特に重要で知っておくべき合併症に「自律神経過反射」があります。 脊髄損傷では運動神経や感覚神経だけでなく、自律神経も障害されます。自律神経には交感神経と副交感…

No. 156 リウマチ性多発筋痛症 Polymyalgia rheumatica (PMR)

リウマチ性多発筋痛症 Polymyalgia rheumatica (PMR) リウマチ性多発筋痛症PMRは慢性の炎症性疾患で、くびや肩、おしりの筋肉に痛みが生じ、その周辺の関節のこわばりを特徴とします。PMRの原因はわかっていませんが、冬に発症することが多く、何らかの感染…

No. 155 長谷川式簡易知能評価スケール

長谷川式簡易知能評価スケール 医療従事者であればほとんどの人が「長谷川式簡易知能評価スケール」を知っていると思います。1974年に作成され、1991年に採点基準を見直された改訂版「HDS-R」が現在は広く使われています。9項目30点満点の検査で短時間で認知…

No. 154 DIBキャップについて

DIBキャップについて 排尿障害がある場合、膀胱留置バルーンカテーテルを使用することはなるべく避けて、間欠導尿で自尿を促すことが大原則でした(No. 133参照)。実際に大半の人が膀胱留置バルーカテーテルから離脱することができます。しかし少数ですが自尿…

誤嚥性肺炎 NEJMの総説 2019.2

誤嚥性肺炎 NEJMの総説 2019.2 NEJMに2019年2月に掲載された誤嚥性肺炎に関する総説です。最新の知見がまとめられています。とくに肺炎が起こる仕組みについて、いままでとは異なる考え方が述べられています。誤嚥性肺炎は、独立したひとつの疾患というより…

No. 152 薬剤による認知機能障害

薬剤による認知機能障害 加齢とともに複数の疾患を患い多数の薬を飲むことになり、さらに薬物代謝能力が低下することで、薬の作用が増強されやすくなり、様々な影響があらわれます。このような状態を「薬剤起因性老年症候群」といい、ふらつき、転倒、食欲低…

No. 151 口腔咽頭の加齢変化とその対応

口腔咽頭の加齢変化とその対応 加齢に伴う口腔咽頭の変化として代表的なものに喉頭の下垂があります。喉頭の下垂によって舌骨も下垂し、その結果、舌根も下方へと引き下げられます。この変化は男性においてより顕著で、舌骨上筋群が喉頭の重みを支えることが…

医療面接の注意点

医療面接の注意点 回復期リハ病棟では患者さんやその家族と話し合いの場を持つことが多々あります。そんな時に普段スタッフ同士でミーティングする様な話し方をしては、患者さんや家族には理解できません。医療従事者の常識は世間の非常識です。そして、医療…

No. 148 大腿骨近位部骨折の非手術例

大腿骨近位部骨折の非手術例 No.75で大腿骨近位部骨折を受傷した人では死亡率があがるという話をしました。 uekent.hatenablog.com またNo.89で大腿骨近位部骨折の手術は早期に行った方が成績が良いという話をしました。 uekent.hatenablog.com 今回は大腿骨…

No. 147 失語症

失語症 失語症は脳の損傷によっておこる後天性のコミュニケーション障害のことで、ことばを書くことや話すこと、読んで、聞いて理解することができなくなります。原因疾患としては脳梗塞が最多で、他の原因には、脳出血や脳腫瘍、中枢神経系感染症などがあり…

No. 146 脳卒中後の復職について

脳卒中後の復職について 就労中の人が脳卒中を発症した場合、復職も回復期リハでの重要な目標のひとつになります。脳卒中が比較的軽症だと日常生活動作は早期に自立し、FIMが満点になることは容易かもしれません。しかし仕事に復帰するとなると、さらに複雑…

No. 145 鼻出血

鼻出血 60%の人が一生のうちに鼻出血を経験するとされており、そのうちの約6%が医療機関での治療を必要とするそうです。 鼻出血の80-90%は鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位(図1)からの出血です。 その場合正しい圧迫を行えば止血することができます。鼻出血の…

No. 144 ボトックスについて

ボトックスについて 脳卒中後の片麻痺では、筋の緊張が亢進する「痙縮」とよばれる症状を起こすことがあります。上肢では関節を屈曲する筋の痙縮が強くなり腕が曲がったままになり、使えない、痛みがある、という状況になりやすく、下肢では関節が伸びる方向…

No. 142 高齢者の食欲不振

高齢者の食欲不振 食欲不振に対するアプローチの流れ 高齢者でのある程度の食欲低下は生理的な反応でもあります。食欲を引き起こす消化管ホルモンの分泌は低下し消化管運動は低下します。高齢者の摂取エネルギーは30代成人の1/3程度であったとの報告もありま…

No. 141 変形性膝関節症

変形性膝関節症 変形性関節症の診断基準には明確なものがありません。というのは、症状と画像所見が必ずしも一致しないことがあり、レントゲン上はわずかな変形なのに症状がひどかったり、逆にレントゲンでは重度の変形をみとめるにもかかわらず症状が軽かっ…

No. 140 脳梗塞のEarly CT signについて

脳梗塞のEarly CT signについて 脳梗塞は再発することがあります。発症1年目で5-10%の人が再発するとされており、回復期リハ病棟入院中にも再発する可能性があります。脳梗塞は早期発見が重要です。というのは、近年脳梗塞の治療に劇的な変化が起こっている…

No. 139 鎖骨骨折のリハビリテーション

鎖骨骨折のリハビリテーション 鎖骨骨折は全骨折の10~15%を占める比較的多い骨折ですが、回復期リハ病棟入院適応疾患ではないため、鎖骨骨折のみで回復期病棟へ入院してくることはありません。多くは他の骨折や外傷を伴う多発外傷のなかのひとつとして治療…