No. 170 義足の足部
義足の足部パーツは多種多様なものが市販されています。様々な素材のものが複数のメーカーで製造されています。それぞれの足部に固有の特徴がありますが、ここでは足部の分類ごとに、利点と欠点について説明します。義足の足部の分類方法は多数あり、今回は以下のような分類を用います:
- 可動軸なし
- SACH:solid ankle cushion heel
- SAFE:solid ankle flexible endoskeleton
- 可動軸あり
- 単軸:底屈/背屈
- 多軸
- 油圧制御式
- エネルギー蓄積型/ダイナミックレスポンス型
- コンピュータ制御型
- 内部電源付きコンピュータ制御型
- 特殊活動用
可動軸なしの足部
Solid Ankle Cushion Heel Foot
SACH足はK1レベルの人が適応になります。この足部には可動部分がないためとても軽量で耐久性があり安価です。踵のクッションが足関節の底背屈の動きをシミュレートします。キール部分で動きを制限しているため、不整地の歩行には向いていません。
Solid ankle cushion heel (SACH)
Solid Ankle Flexible Endoskeletal Foot
SAFE足はSACHと同じく、可動部分がないので耐久性があり安価です。SACHと違うところは、キールが柔らかいためSAFE足は多少の内反外反運動が可能であることです。これによって多少の不整地であれば対応が可能ですが、その動きは限られておりエネルギー蓄積機能もありません。SAFE足はK1レベル~低いK2レベルの患者が対象です。
可動軸のある足部
単軸足部
単軸足部は足関節の背屈と底屈ができます。ゴム製のバンパーがこの動きを可能にし、中間位に戻るように制御します。歩行周期の立脚期での足底接地が早くなることで、大腿切断患者の膝関節の安定性が増します。単軸足部はK1からK2レベルの患者に適しています。
多軸足部
多軸足部は足関節の正常な運動軸に一致した複数の運動面での動きを可能にしています。多軸運動は、やわらかいキールや機械的な関節機構によって実現されています。柔らかいキールの足部では、床反力によって足部が変形してキール自体のなかで運動が生じます。機械的な関節機構による多軸足部では、底背屈、内外反、水平面での動きの3つの運動面すべてで動きを再現しています。いくつかの多軸足部は、エネルギーを蓄積する素材を用いています。多軸足部の欠点は、部品数が多いために頻回な修理やメンテナンスが必要となることです。適応となるのはK2やK3の機能の患者です。
特殊な足部
さまざまな特別なニーズに対応するための足部があります。例えば、踵の高さがゼロから3インチまで調節できる足部があり、患者はさまざまな高さの靴を履くことができます。他には、ランニングに対応するように設計されたものがあります。
エネルギー蓄積/ダイナミックレスポンス足部
エネルギー蓄積型/ダイナミックレスポンス型足部はより活動的な患者に用いられます。これらの足部は荷重時にエネルギーを蓄積して、蹴り出しの際にそのエネルギーを解放する素材(プラスティックやカーボン)で出来ています。ばねが長いほど、蹴り出しの際により多くのエネルギーを得る事ができます。衝撃吸収機構を搭載したものもあり、残存肢への床反力を低減してくれます。このタイプの足部は多軸足部と同じ動きができるものもあります。適応はK3やK4の機能の患者です。
エネルギー蓄積型
コンピュータ制御足部
コンピュータ制御の内部電源付きの足部は、遊脚期の足関節背屈のみを行うものと、さらに立脚期の足関節の底屈まで行うものがあります。後者は上り坂で特に役に立ちます。これらの足部が歩行時のエネルギーコストを低減することを示すエビデンスが示されています。欠点としては、これらの足部は重く、水に濡らすことができず、毎日充電する必要があるということです。適応となるのはK3以上の機能の患者です。