No. 171 大腿義足の膝継手

膝継手は機能レベルに応じて分類されます。とてもシンプルな設計のものから、コンピュータを内蔵したものまで様々なものがあります。最適な膝継手の選択にはさまざな要素を考慮する必要があります。患者の活動レベルや残存肢の長さ、近位筋の筋力と制御能力などを考慮します。膝継手の制御機構には、機械的摩擦によって一定の抵抗力を作り出して、一定の歩行速度で歩くものから、油圧式の制御機構やコンピュータ制御によってさまざまな歩行速度で歩くことを可能にするものまであります。足部の処方と同じように、膝継手を処方する際にも、患者の機能的なニーズやゴール、義足を使用する環境を考慮する必要があります。以下はよく用いられる膝継手のリストです:

    • マニュアルロック
    • 単軸
    • 重量作動スタンスコントロール(安全膝)
    • 多軸
    • 油圧/空気圧スイングコントロール
    • 油圧スイング・スタンスコントロール
    • コンピュータ制御(スタンス/スタンス・スイングコントロール)
    • 電源内蔵コンピュータ制御
    • 機能を組み合わせたハイブリッドユニット

マニュアルロック膝継手

マニュアルロック膝継手は、膝を完全に進展するとロックがかかり、ロック解除はレバーを引くことで行います。レバーはソケットの近位部の前外側に取り付けられます。この膝継手はロック解除しない限り曲がりません。マニュアルロック膝継手は最も安定した膝継手ですが、欠点としては膝を伸ばしたまま歩く必要があることです。この膝継手は安定性が第一の課題である場合や両側切断の患者に用いられます。この膝継手は比較的耐久性があり安価で、K1レベルの患者に適応があります。

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マニュアルロック式膝継手

 

単軸膝継手

単軸膝継手はヒンジの様な構造です。遊脚期にはスプリングによる伸展補助機能により完全伸展位までスムーズに到達します。支持機構はアライメントと随意制御に依存しているため、患者は十分な近位筋の力と制御機能を要求されます。この継手は軽量で耐久性があり安価です。K1レベルの機能の患者が適応です。

 

重量作動スタンスコントロール(安全膝)

安全膝は単軸継手に、荷重によるロック機構が加わったものです。立脚期に荷重がかかると、ブレーキ機構により自動的に膝にロックがかかります。ブレーキ機構が効いている場合は、膝は20度以上は曲げることができません。遊脚期の開始時に義足への荷重がなくなると、ロックが解除されて遊脚期の間は膝が曲がります。この膝継手を、新規の切断者で使用して、立脚期に安全なロックが得られる状況から開始して、単軸膝継手へと段階的に移行することがあります。K1からK2レベルの患者が適応です。

 

多軸膝継手

多軸膝継手は、構造そのものによる安定性が備わっています。多軸機構によって、膝の屈曲と伸展に伴って回転中心が刻一刻と移動します。回転中心が、膝を伸ばした状態ではより近位後方になることで、立脚期の初期の膝の安定性を高めます。膝を屈曲すると、回転中心は遠位前方へと移り、立脚後期での膝関節の屈曲を補助します。この膝継手には油圧式または空気圧式の遊脚期制御機構を追加することもできます。膝の回転軸とソケットへの接続部との間の距離が比較的短いため、膝関節離断の患者にとって理想的な膝継手です。

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多軸膝継手

 

油圧式/空気圧式膝継手

油圧または空気圧式の膝継手は、流体(油圧式)または空気(空気圧式)が充満したシリンダーを内蔵しており、遊脚期中に、膝の伸展と屈曲を制御します。また一部のものは、立脚期の制御機能も搭載しています。このタイプの膝は、良好な制御機能と筋力を持つ活動的な患者に適しています。歩行速度は速くしたり遅くしたりする機能を提供できるので、K3機能分類レベルで歩行できる人を対象としています。

 

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油圧式制御機構つき膝継手

 

コンピュータ制御式膝継手

コンピュータ制御式膝継手は、いくつかのセンサからマイクロプロセッサへの入力によって制御を行います。使用されるセンサには、ひずみゲージ、加速度計、ジャイロスコープが含まれ、膝の角度、動きの方向、角速度、および体重負荷の状態に関する情報を提供します。マイクロプロセッサは、この情報を毎秒50~1000回のレートで分析して膝の屈曲抵抗を制御します。近年これらの膝継手の耐久性と信頼性は向上していますが、水辺やその他の過酷な環境で使用する場合は注意が必要です。また、コンピュータ制御式膝継手は、活動的な患者に適していますが、ほとんどはランニングやその他の高活動スポーツ用には設計されていません。一般的に機能指数レベルK3の人が適応です。ただし、立脚期のみコンピュータ制御を行う継手がいくつかあり、これはK2レベルプラスアルファくらいの人でも適応があります。

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コンピュータ制御式

 

電源内属型コンピュータ制御式膝継手

現在、内部発電が可能なモーターを備えた市販のコンピュータ制御式膝継手が1つあります。この膝継手は膝関節の屈曲と伸展の自動運動が可能です。これは特に、起立動作と階段を昇るときに役立ちます。この膝の欠点は、費用がかかること、重量が重いこと、バッテリーの寿命が限られていることです。また、雨や温度変化などの環境要因にも比較的敏感です。

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電源内蔵コンピュータ制御膝継手