文献紹介:介護施設における除菌処置の効果

Decolonization in Nursing Homes to Prevent Infection and Hospitalization

Loren G. Miller, M.D. et al.

NEJM 2023; 389: 1766-1777

 

高齢介護施設の入所者は、感染症にかかり入院するリスクが高く、また多剤耐性菌を保有するリスクも高いことが知られています。介護施設における多剤耐性菌の保有率は65%(病院では10~15%)との報告があり入所期間が長くなればなるほど保有率は高くなります。

この研究では、28の介護施設(ナーシングホーム)でランダム化試験が実施されました。除菌を行った群と、通常のケアを行った群で、感染症による入院率を比較しています。18ヶ月のベースライン期間の後、4ヶ月の導入期間(スタッフの訓練など)を経た後に、18ヶ月の介入を実施しました。

除菌方法は以下の通り;

入浴:シャワーの場合、4%クロルヘキシジン洗浄液を使用しその後洗い流す。清拭の場合、2%クロルヘキシジンを含ませた布で清拭
鼻腔除菌:ポビドンヨード10%水溶液を染み込ませたスワブで平日の5日間に1日2回、隔週で実施

参加した28施設のうち14施設を除菌群、14施設を通常ケア群に振り分け
除菌群7388人、通常ケア群6564人で比較されました。

結果、除菌群のアドヒアランス(手技を実施できた割合)はクロルヘキシジン入浴が87.4%、鼻腔除菌が67.4%でした。

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除菌による有害事象は35件報告され、クロルヘキシジンによる発疹が34件でいずれも軽症で、ポビドンヨードによる咽頭痛が1件でした。

 

クロルヘキシジンとポビドンヨードを用いた介護施設での除菌戦略は、感染症による入院を減らしました。