No. 133 膀胱留置カテーテル抜去について

膀胱留置カテーテル抜去について

 

No.16にも書いた膀胱留置カテーテルについてのより詳しいまとめです。

 

uekent.hatenablog.com

 

I. 留置カテーテルの抜去に向けた取り組みの先駆的研究

上田 朋宏:老人総合病院における入院患者の排尿管理について. 泌尿紀要37:583-588, 1991

  • カテーテル留置されていた患者157例中、139例(89%)はカテーテルフリーとなった
  • オムツ装着者158例の内、157例(99%)がオムツが不要になり、尿失禁なく排尿可能となった
  • カテーテルフリーないしオムツ不要となるまでの期間は平均144

半数は1ヶ月以内、1年以上の長い治療期間を要した症例が約1

 

つまり膀胱留置カテーテルの大半は抜去可能である

 

II. 膀胱留置カテーテルの適応

絶対的適応

相対的適応

尿閉の急性期

心疾患や脳出血など、救命に伴い体の循環動態を監視する必要のあるとき

手術や検査など、治療に伴い体の循環動態を監視する必要のあるとき

泌尿器系手術後の術創、膀胱、尿道の安静を必要とするとき

膀胱容量の高度の減少(蓄尿機能がほとんどない場合)

陰部の手術創や皮膚障害、褥瘡への尿汚染を防止する必要のあるとき

間欠的導尿の適応であるが、実施できないとき

夜間多尿のため、睡眠が著しく障害されるとき

体力低下に伴う負担を軽減する必要のあるとき

*適応期間は、おおむね短期間である。留置目的が消失しているにもかかわらず、留置しつづけることのないよう、適応の評価は定期的になされる必要がある。

 

III. 膀胱留置カテーテルのメリット(◯)とデメリット(

 

本人

家族

医療者

社会



◯腎臓への尿の逆流防止

◯膀胱内の残尿の消失

◯排尿動作不要で安静が維持できる

尿路感染を起こす

膀胱の萎縮を引き起こしやすい

残存機能を低下させやすい

結石ができやすい

不快感や疼痛を伴うことがある

行動が制限される

尿道口から尿が漏れることがある

◯介護の軽減

◯尿の片付けが楽

◯夜間睡眠の確保

カテーテル管理が必要

◯尿量が正確に測定できる

◯介護の軽減

◯尿の片付けが楽

カテーテル管理が必要

カテーテル交換が必要

 



◯寝衣の尿汚染への心配軽減

◯家族に対する心理的負担軽減

他人にカテーテル蓄尿袋が見えることによる羞恥心

自己イメージの崩壊

◯尿汚染の心配軽減

管理の心理的負担

罪悪感

家族イメージの崩壊

管理の心理的負担

病気や老いへのマイナスイメージ



尊厳の喪失

経済的負担

行動範囲の限局

住環境の不適合

◯行動範囲の拡大

経済的負担

薬物治療以外の治療やケアに対する経済的保障がほとんどない

他職種とのチーム形成が困難

多剤耐性菌のリスク

経済的負担の増加

 

IV. カテーテルの留置期間

・留置目的のある期間のみ。目的が消失したら即抜去

・定期的なカテーテルの交換は意味がなく、挿入による感染機会を増やすだけ

・感染率は14日間の留置で 100

 

V. カテーテル留置の合併症

尿路感染症、尿路結石、尿道損傷や狭窄、膀胱刺激症状、萎縮膀胱

 

VI. カテーテル抜去の手順

1.朝から午前中に抜去する

2.抜去時刻と、抜去前に排尿バックに貯留していた排尿量を記録する

3.水分摂取を勧め、尿意を確認する

尿意を認めたら自排尿を促す。尿意が曖昧な場合は2-3時間おきに、オムツ内排尿と超音波尿量測定器による膀胱内の残尿量をチェック尿意を確認し、排尿誘導を行う。

4.その日のうちに必ず1度は導尿して残尿を測定し、今後の導尿回数を決定する

翌日以降も主治医の指示を受けながら、残尿量に合わせて導尿回数スケールを設定して経過を見る。

自然排尿が認めらない場合も、2週間は間歇導尿を続ける。

5.排尿日誌を書く

尿意の有無、排尿量、排尿(失禁)回数などを記録する。

6.抜去後の排尿症状の観察をする

抜去後は一時的に、排尿筋刺激症状(頻尿、尿意切迫感)が生じやすい。十分な水分摂取、排尿時に座位姿勢を促し、腹圧を十分にかけられる姿勢を工夫することで残尿が少なくなり、排尿機能が次第に改善しやすくなる。

 

a) カテーテル抜去後、自排尿があった場合

1.できる限りトイレでの排尿を支援する

2.尿道カテーテル抜去後6時間の間に自尿があれば、その後残尿測定を行い

残尿100 ml未満・・・・導尿不要

100199 ml・・・1/

200299 ml・・・2/

300399 ml・・・3/

400499 ml・・・4/

500 ml以上・・・・残尿が500 ml以上にならないように適宜回数を増やす

3.夜間は、睡眠と安全に考慮しながら排尿行動を支援する

4.排尿日誌によるモニタリングを継続する

 

b) カテーテル抜去後、自排尿がない場合

1.飲水をすすめながら、排尿誘導を実施する

2.導尿を実施する

  • 抜去後6時間経っても自尿がなければ、14回の導尿からスタートする。
  • 残尿500mlで膀胱内に負担がかかるため、6時間未満であっても、超音波尿量測定器で500ml前後の残尿が確認された時には導尿を行う。
  • 14回の導尿の時間は、朝・昼・夜・寝る前といった間隔でよい。等間隔でなくてよいが、8時間以上の間隔をあけない。
  • 次の日の導尿回数は、前日の残尿の記録の最低値を見て決める。
  • 12週間の間欠導尿の継続が必要であることを認識する。