ミニレクチャー No. 16 その膀胱留置カテーテル、本当に必要?

その膀胱留置カテーテル、本当に必要?

 

膀胱留置カテーテルが挿入されたままの患者さんが時々います。急性期病院で挿入されたまま、転院後も留置された理由もわからないまま継続されていることがあります。ある病院でカテーテル抜去の取り組みを行ったところ、カテーテル留置されていた157人中、139人(89%)が、平均144日かけてカテーテルフリーとなりました。うち半数は1ヶ月以内にフリーとなっています1)。つまりほどんどの膀胱留置カテーテルは抜去できるのです。

 

膀胱留置カテーテルが必要な状況は、限られています(下表参照)。長期間留置されているのは、介助する側の都合です。

 

表:膀胱留置カテーテルの絶対的適応

尿閉の急性期

・心疾患や脳出血など、救命に伴い体の循環動態を監視する必要のあるとき

・手術や検査など、治療に伴い体の循環動態を監視する必要のあるとき

・泌尿器系手術後の術創、膀胱、尿道の安静を必要とするとき

・膀胱容量の高度の減少(蓄尿機能がほとんどない場合)

 

一方で留置に伴う合併症は多く、尿路感染症の発症率は2週間の留置で100%です。その他に尿路結石、尿道狭窄や損傷、膀胱刺激症状、膀胱の萎縮なども起こります。結局、楽をしようとして、結果として患者さんへの負担も、介助者の手間も増やすことになります。また、定期的な交換は意味がなく、挿入により細菌を中に押し込み感染機会を増やすだけです。

 

カテーテルを抜去後は、残尿測定を実施しつつ膀胱内に過剰な尿がたまらないよう間欠導尿を実施しながらトイレ誘導を行い自力排尿を目指します。詳しい手順は成書などを参照してください2)

 

長期間の留置後はカテーテルを抜去しても、自力での排尿が困難な場合がほとんどです。しかし、上記の論文にあるように長期的にみれば9割の人でカテーテルフリー(=間欠導尿も不要)になります。まずは膀胱留置カテーテルが長期間入ったままであることは普通ではない異常なことであると、皆が認識することが第一歩です。

 

病院内膀胱留置カテーテルゼロを目指しましょう。

 

参考文献

1)上田 朋宏:老人総合病院における入院患者の排尿管理について. 泌尿紀要37:583-588, 1991

2)影山 慎二:排尿障害で患者さんが困っていませんか?~泌尿器科医が教える「尿が頻回・尿が出ない」の正しい診方と、排尿管理のコツ. 羊土社, 2016.