No. 132 めまい

めまい

 

「めまい」を訴える患者さんは少なくありません。この時大切なのは、「めまい」ということばが具体的にどの様な症状なのかを聞くことです。視界がぐるぐると回っている「回転性めまい」の場合や、起立性低血圧などによる意識消失の一歩手前「前失神」の場合、小脳失調などによる「平衡障害」、筋力低下などによる「ふらつき」まで、様々なものがどれも「めまい」と表現される場合があるので注意が必要です。

この中で「回転性めまい」を示す代表的な疾患として、良性発作性頭位めまい症 ( BPPV:benign paroxysmal positional vertigo)という疾患があります。「めまい」を訴える疾患のうちの4割を占める、最も頻度の高い疾患です。よく患者さんが「わたしはメニエルがあるから」と言う場合の「メニエル」は本当のメニエル病ではなく、このBPPVであることがほとんどです。メニエル病は内耳の疾患なので聴覚障害を伴います。一方BPPVは、その名が示す通り「良性」で時間が経てば自然に治ります。

 

BPPVは平衡感覚を司る半規管の中の耳石という石が、本来あるべきところから転がりだして動き回ることで平衡感覚に余計な刺激が加わり、めまいを引き起こします。頭の位置が変わると耳石が動くためにめまいが誘発されます。寝ていて座った時や寝返りをした時に、眼振を伴うめまいが生じれば、ほぼ間違いなくBPPVです。

 

治療は安静臥床でもよいのですが、中には長く症状が続く場合があります。早く直そうと思えば浮遊耳石置換法という、転がりだした耳石をあるべき場所に戻す方法が有効です(ネットで「Eply法」で検索すれば動画が見れます)。いくつかの内服薬や点滴薬がつかわれますが、どれもエビデンスはなく気休め程度の効果しかありません。

 

参考文献

今日の臨床サポート

坂本壮:あたりまえのことをあたりまえに 救急外来診療の原則集, 有限会社シーニュ, 2017.