文献紹介:歩きと車椅子利用での転倒や生命予後の違い

Comparison of Fracture Among Older Adults Who Are Ambulatory vs Those Who Use Wheelchairs in Sweden

JAMA Network Open, Feb 13, 2023;6(2)

Kristian F. Axelsson et al

 

加齢や疾患の影響により転倒リスクが高まると移動方法を歩行から車椅子へと変更することがあります。しかし車椅子には不動による下肢の血栓塞栓症や褥瘡、骨量減少のリスクがあります。一方で歩行よりも転倒リスクは減少する可能性がありますが、これまで検証されてませんでした。

この論文ではスウェーデンの高齢者を対象に車椅子利用者と歩いている人で、骨折・転倒・死亡リスクを比較する大規模コホート研究が実施されました。

2007年1月1日~2017年12月31日にスウェーデンのSenior Alert Registerに登録されていた65歳以上の人から、車椅子利用者と歩行可能な対照群を抽出し、2022年6月にデータ分析を実施されました。車椅子利用者は5万5442人、歩行可能対照群は41万299人の中から傾向スコアマッチングを行い1対1の割合で抽出されました。

Senior Alert Registerは歩行状態を;
(1) 自立歩行(杖使用も可)

(2) 介助者がいれば歩行可能

(3) 日常的な車椅子利用

(4) 寝たきり

に分類し登録されています。この研究では(1)と(3)の人を対象にしています

主要評価項目は、骨折、転倒による骨折以外の外傷、死亡などです。

結果は以下の通り、車椅子利用者では骨折リスクは低下していたものの、死亡リスクはむしろ高くなっていました。

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転倒を恐れるあまりに車椅子を選択することは検討の余地があります。