骨折の保存療法の一般原則

前回に引き続き、Up to Date のほぼ全訳です。

General principles of definitive fracture management

 

Authors:Anthony Beutler, MDStephen Titus, MD

Section Editors:Patrice Eiff, MDChad A Asplund, MD, MPH, FAMSSM

Deputy Editor:Jonathan Grayzel, MD, FAAEM

Literature review current through: Mar 2020. | This topic last updated: Mar 12, 2019.

 

INTRODUCTION

骨折の治療の基本は「動かさないこと」です。複雑骨折や不安定型の骨折では、多くの場合は内固定(=手術による固定)によって動かないようにします。一方で、ずれる危険性の低い安定型の骨折ではキャスティング(=ギプス)による固定によって動かないようにすることができます。キャスティングは整形外科医や習熟したプライマリケア医が巻きます。ここではキャスティングの原則と方法、ならびに必要なフォローアップについて述べます。

 

CASTING

Overview ― キャスティングは非開放性のずれていない骨折の標準的な治療法です。キャストは骨折部を安定させ、骨膜周縁の仮骨形成を促し、骨折の治癒過程を促進します。キャストを開始する最適な時期は、外傷後の腫脹が解消した時期です。多くの場合は受傷後5-7日になりますが、骨折の部位や種類によって変わります。キャストを装着するまでのこの期間はスプリントを使用します。しかし、いくつかの骨折では、最初からキャストを使用する方が良い場合があります。その場合、単一のキャスト(いわゆる普通のもの)を使用する場合もありますが、キャストを二つのパーツに分けて、軟部組織の腫れに対応できるようにすることもあります。

急性期からキャストを使用する骨折には以下のようなものが含まれます:

    • 整復が必要
    • ふたつの隣接する骨の骨折(橈骨と尺骨など)
    • 分節骨折
    • らせん骨折
    • 骨折部のずれがある
    • 筋収縮によりずれを生じる可能性の高い部位の骨折

上腕骨近位部骨折などはキャスティングに適していません。また小児のある種の足関節骨折はキャスティングすべきですが、あまり行われません。それでも非観血的治療方法としてキャスティングは選択肢のひとつとして残っています。キャスティングを成功させるには3つのことが必要です:最適な素材、最適な姿位、最適なキャスティングの種類の選択です。

 

Materials ― 多くの素材がキャスティングに利用されていますが、グラスファイバーと石膏がもっともよく使用され、安価です。グラスファイバーは軽量で強く、通気性があり、石膏よりも固まるのも早いです。腫脹した四肢を模したモデルによる研究によると、グラスファイバーをストレッチ-リラックステクニックで使用した場合、石膏よりも腫脹に対して対応し、皮膚表面圧を低く保つことが示されています。しかし、グラスファイバーは皮膚刺激性であるため、医師は手袋を装着してキャストを巻く作業をする必要があります。

石膏はグラスファイバーよりも均一に作成することができるため、骨折の整復においては有利です。 また、石膏は固まるまでに時間がかかるため、経験の浅い医師でも正確に装着させることができます。しかしながら、石膏テープはグラスファイバーよりも扱いにくく、重く、壊れやすく、さらに硬化する際に発熱します。これらの理由により、多くの臨床医はグラスファイバーを好みます。

グラスファイバーや石膏から皮膚を保護することは、皮膚損傷などの合併症を防ぐために不可欠です。皮膚保護のためにまずはストッキネットをつけ、その上から必要な分だけ緩衝材を巻きます。ストッキネットも緩衝材も以前は綿で出来ていましたが、今は合成繊維のものを利用できます。いくつかの合成繊維はキャストが濡れても大丈夫なように設計されています。

緩衝材は適切な量を使用することが重要で、特に骨突出部(外側上顆、尺骨茎状突起、内果・外果など)は、皮膚損傷を予防するためにしっかりと覆います。しかし骨折部に過剰に緩衝材をまくと、固定が不十分になるため注意が必要です。

 

Type of cast ― 適切なキャストを選択する際に考慮すべきことは、どの関節まで覆うか、どのくらいの長さにするか、ということです。固定の効果を最大にするためには、骨折部の近位の関節と遠位の関節を含むキャストを使用する必要があります。これは橈骨遠位端骨折の様な不安定な骨折の治療では重要です。可能な限り骨折した骨の全長がキャスト内にふくまれる長さにします。添付の表には、いくつかの一般的なキャストと適応のある骨折の一覧を示しています(表1)

 

表1. 一般的なキャストと適応となる骨折

キャストの種類

骨折

主な特徴

Short arm cast

第2−5中手骨基部の骨折

偏位のない三角骨骨折

手関節30度

上端は肘窩の2cm下

緩衝材 1-2層

キャストテープ 2層

Short arm cast

偏位のない橈骨遠位端骨折

手関節中間位

上端は肘窩の下2cm

緩衝材 1-2層

キャストテープ 2層

Long arm cast

整復された橈骨遠位端骨折

手関節軽度屈曲・尺屈位、肘90度屈曲

上端は腋窩の3cm下

緩衝材 1-2層

キャストテープ 3層

Short arm cast with thumb spica

第1中手骨基部関節外骨折

舟状骨骨折が疑われる時

偏位のない遠位1/3の舟状骨骨折

手関節30度

上端は肘窩の2cm下

緩衝材 1-2層

キャストテープ 2層

Long arm cast with thumb spica

中央から近位1/3の偏位のない舟状骨骨折

手関節軽度屈曲・尺屈位、肘90度屈曲

上端は腋窩の3cm下

緩衝材 1-2層

キャストテープ 3層

Short leg walking cast

腓骨骨幹部単独の骨折

単独の果部骨折や腓骨遠位の骨折

踵骨隆起(内側/中間/外側突起の骨折)

距骨頂部/頭部/剥離骨折

偏位のない中足骨骨幹部骨折

第5中足骨近位部剥離骨折

足関節90度

キャストの上端は膝窩の4cm下

緩衝材 3-4層

キャストテープ 4層

Short leg non-weight bearing cast

踵骨載距突起基部骨折

距骨頸部/体部骨折

整復された中足骨骨折

第5中足骨近位部骨折(Jones骨折)

足関節90度

キャストの上端は膝窩の4cm下

緩衝材 3-4層

キャストテープ 3層

 

Application of cast ― グラスファイバー製キャストの装着のキモを以下に示します。

 

適切な幅の緩衝材とキャストテープを選択する

一般に5cm幅のテープは手、7.5cm幅は前腕、10cm幅は下肢や上腕に用いられます。ストッキネットの幅はキャストのサイズに基づいて選択します。ストッキネットはキャストよりも少し長めに切り、最後に折り返してキャストの端を覆うことで、ふちをなめらかな状態にすることができます。

最初にストッキネットを被せる

シワにならないように注意します。シワがあると圧損傷を引き起こすかもしれません。その次に緩衝材を巻きます。四肢の遠位から近位へと、半分重なるように巻きます。骨突出部には追加の緩衝材をあてます。一般的に上肢は2層、下肢は3-4層が最適です。

緩衝材をまいて四肢を適切な位置におき、キャスティングテープを水にぬらす

グラスファイバーは冷たい水を用いる必要があります。石膏ではぬるま湯か室温の水を用います。水が温かいほど早く固まりますが、熱傷の原因になるかもしれません。

キャスティングテープを遠位から巻く

グラスファイバーテープを巻く時には、しっかり引き伸ばしてからすこし緩めてまくことで、皮膚表面への圧を軽減することができます。

特定の場所、例えば母指まわりなどを巻く時には切れ目を入れる

それによってキャストが緩むのを防ぐことができます。

最後のキャストの数巻きは必要に応じて型を整えながらおこなう

整型の目的は不安定な骨折のアライメントを保つことです。楕円状のキャストの方が、正円のキャストよりも骨折部を適切なアライメントに保つのに適しています。

不適切な整型やキャストに鋭利な突起があると、皮膚損傷のような重篤な合併症を引き起こします。経験の少ない臨床医は、整型を楕円状にやさしく整えるようにすべきです。手のひらを用いて行い指を使わないようにします。この方法ならば、皮膚損傷のリスクを低減し、ある程度適切な整型ができます。

熟練した臨床医は3点整型技術を用います。これは1点を骨折部の真上に、骨折部がずれやすい方向に対抗するように直接圧をかけます。そしてのこり2つの点は、ひとつめの点の反対側の両端から圧をかけて骨折部を固定します。この3点の圧はキャストを装着するまで維持します。上でも述べたように、手のひらを使用してキャストを整型し、指の使用はさけます。

ストッキネットの両端を折り返してキャストの端を覆う

このステップの後に、キャスティングテープを1層追加で巻きます。この写真では、指の角度が付けられているため手首が橈屈しているように見えますが、手関節は中間位です。

最終的にshort arm castでは2層のグラスファイバーテープ、免荷のshort leg castでは3層、荷重するshort leg castでは4層になります。

キャストをチェックして、突起や鋭いエッジがないことを確認する

キャストの遠位部に感覚障害や血流障害がないことを確認します。適切なキャスト治療について書面による説明・指示を患者に提供する必要があります。

 

もうひとつ、経験の少ない臨床医にとって役に立つグラスファイバーのキャストを巻く方法があります。この方法は、キャストテープを巻く前に濡らさない点が異なります。グラスファイバーテープを直接巻いて、一層巻くごとにその上から水ベースのジェルをスプレーします。この方法だと長時間位置を調整することができます。

同じ手順で下肢のキャストも巻くことができますが、少しだけ注意する点があります:

    • ストッキネットの足関節背側にあたる位置に水平に切れ目を入れ、しわができないようにする
    • 10cmの緩衝材が下肢には必要、骨突出部(果部や腓骨頭)には追加の緩衝材も
    • 足関節を中間位に保ち(特に荷重キャストの場合)、拘縮を防ぐ
    • 神経血管の評価ができるように足趾の先はすべてみえるようにする

Positioning ― キャストを装着する関節はできる限り機能的肢位にします(表1)。通常は手関節や指は握れる位置にして、肘や足関節は90度にします。時にこの原則から調整する必要があります。例えば、橈骨遠位端骨折では、整復のために手関節を屈曲位よりもやや中間位に近い状態で固定します。

きちんと整復して、キャストを上手に巻いたとしても、キャスト装着で骨折部がずれることはあります。したがって、不安定な骨折やキャスト装着前に整復が必要な骨折では、キャスト装着後にレントゲン撮影をすることをお勧めします。

 

Complications ― 骨折による合併症についてはここでは述べず、キャスティングに伴う合併症について述べます。

キャストをつけることで不動化することは、骨折部を整復し骨折の治癒を促すためには重要である一方、それによって関節は拘縮し、筋は萎縮し、廃用症候群を生じ、塞栓症のリスクを高めます。キャストをきつく巻きすぎたり、軟部組織が腫脹してきつくなってしまうと、血管合併症を生じる原因となります。皮膚障害や絞扼性神経障害、コンパートメント症候群などが起こります。キャストをつけている患者が痛みや灼熱感、しびれを訴えた場合には直ちに評価をすべきです。

患者の年齢や依存症によっては、通常の期間のキャスティングでも、理学療法作業療法が必要な程の運動機能と筋力の低下を来す場合があります。他の合併症としては皮膚熱傷があります。これは石膏に温かいお湯を用いた場合に発症する可能性が高くなります。

 

Cast removal ― キャストを巻いた臨床医は、患者がきちんとキャストを除去できる医療機関にアクセスできることを確認しなければなりません。キャストの除去にはリスクがないわけではありません。キャストソーによる外傷は、多くが熱によるものと研磨によるもで、キャスト除去の1%に生じます。けがのリスクを減らすために、「アップアンドダウン」テクニックの使用を推奨します。これは、のこをキャストに沿って(潜在的には皮膚に沿って)引き切るのではなく、のこを押しあててキャストに穴を開ける感覚で皮膚に対して垂直に操作する方法です。熱傷のリスクは、先に使用して暑くなったのこを冷やすことでリスクを軽減できます。のこの刃を冷やす方法について検証した実験によると、以下の方法でより早く冷却できました:バキュームを使用しながら切る、70%イソプロピルアルコールをガーゼでブレードに塗布、もしくはキャストの緩衝材に塗布する、冷たい水ブレードにあてる。

 

Keeping casts dry ― 特に、暖かい季節に小児のキャストをぬらさずに保つことは困難を極めます。6つの方法を比較した観察研究によると、キャストをぬらさないために効果的で安価な方法は、キャストをビニール袋を2枚重ねで包み、ダクトテープで密閉する方法です。写真11に示すようにテープの半分をバッグの端に、もう半分を皮膚に貼ります。このアプローチは既製品と同じくらい効果的でした。場合によっては、既製品は迅速に付け外しができ、再利用できるため便利な場合があります。

 

FOLLOW-UP VISITS

Overview ― キャストが巻けて、骨折部のアライメントの確認ができたら、次の重要なステップは、タイムリーなフォローアップを確実にすることです。受診の間隔は、骨折の性質、キャストの種類、および患者のコンプライアンスによって異なります。

追跡の必要ないまれな例(健常成人の空気圧スプリントを使用した軽度の腓骨剥離骨折など)であっても、臨床医は、皮膚損傷、感染、神経血管障害の兆候、痛みの持続や増悪があった時に誰に相談するかについて明確な指示を提供する必要があります。不安定な骨折や整復後の骨折は頻繁に再評価する必要があります。正確な骨折部のアライメントが維持されるようにするには、最初は週に2回程度の頻度が必要です。

原則として、下肢のキャスティングでは安定性を重視して固定期間が長くなります。一方で上肢キャスティングは一般にROMを維持するために固定期間は短くなります。

 

Follow-up visits for stable fractures ― 安定した骨折のキャスティング後最初のフォローアップは、通常3~7日後に予定し、痛み、腫れ、またはその他の急性症状があれば、電話もしくは再受診するように指示します。その後のフォローアップは、患者とキャストによって異なりますが、通常、約2~3週間ごとにされます。

フォローアップのたびに、キャストの摩耗の有無と適切にフィットしているかを確認する必要があります。キャストが緩すぎる、きつすぎる、または過度に摩耗している場合は、キャストを交換する必要があります。ほとんどの荷重する石膏キャストは2~3週間しかもちませんが、荷重しない石膏キャストは約4週間もちます。グラスファイバーのキャストは通常​​、石膏のものよりも2週間長くもちます。これらの時間は患者の活動量、体重、および年齢によって変わってきます。子供と活動的な大人のキャストは、適切な固定を確保するために、より頻繁にチェックする必要があります。フォローアップは、適切なリハビリテーションを指導し、活動制限の遵守を確実にするために重要な機会です。

 

Follow-up visits for unstable fractures ― 不安定な骨折は、キャストによる保存的治療では、整復がずれたり、アライメントが不良になる傾向があります。アライメントの再評価をする時期は、骨折の種類と患者の年齢によって異なります。例として、小児の橈骨尺骨の骨折は、最も不安定な骨折の1つです。子供は比較的速い速度で治癒し、さらに前腕では許容される変形治癒の角度は限られているため、橈骨と尺骨の両方の骨幹部骨折は損傷後の最初の2~3週間は週に2回のX線撮影のフォローアップが必要です。逆に、成人の曲がってつきそうな橈骨遠位端骨折は、損傷後7~10日ごとに1回再評価する程度で、そのときに変形がしていても、成人の骨折片は比較的可動性があるため骨片を再操作できます。

不安定な骨折の治療期間中にアライメントを再評価するためのX線写真は、キャストをつけたままで撮影する必要があります。伝統的な石膏やグラスファイバー装着下で撮影されたX線写真は、長骨骨折のアライメントを判断するのには十分な明瞭さがありますが、治癒を確認するには不明瞭である可能性があります。いくつかのタイプのキャスティングテープは、優れたX線透過性(3M Scotchcast、M-PACT OCL Polyliteなど)があります。これは不安定な骨折を評価するときに役立ちます。

 

Orthopedic referral ― フォローアップの間に、整形外科的評価が必要な合併症を発症することがあります。例として、骨折部の角度の許容できない変化がフォローアップのX線写真でみつかることがあります。そのような場合は、最良の治療法を決定するために整形外科の診察を受ける必要があります。新たな神経血管障害がみられた場合も整形外科医による即時の評価を必要とします。

 

FRACTURE HEALING

キャスティングの目標は、骨折が適切に治癒するように十分な固定期間を提供することです。ただし、固定期間が長引くと合併症のリスクが高まります。骨折治癒の正確な評価は、これらの相反する二つの事項のバランスをとるために必須です。残念ながら、いつ臨床的に癒合したかを判断することは難しいです。骨治癒の基本的な生物学を理解し、臨床的および放射線学的要素を組み合わせて考えることで、骨折が治癒した時期を最も正確に推定できます。

 

Clinical assessment of fracture healing ― 適度な骨折の治癒が得られたうえで、過度の固定化による合併症を防ぐためには、臨床的骨癒合の適切な評価が不可欠です。骨折の生体力学的研究では、臨床的骨癒合は、通常、X線撮影で骨癒合の所見がえられる1~2週間前に起こることを示しています。さらに、骨折治癒の放射線学的パラメーターは観察者間の相関が低く、臨床的、生体力学的、組織学的測定値と比較すると治癒の進行を過小評価する傾向があります。

このX線撮影パラメーターの限界を考慮すると、一般的な臨床診療であれば、通常、損傷後4~6週間経過した、治癒していると予想される時期にフォローアップをスケジュールします。そしてキャストを外し、治癒の臨床的特徴を評価します。これらには、

    • 荷重に耐える能力
    • 骨折部位に圧痛がない
    • 手動ストレステストによって痛みが生じず安定している

ことが含まれます。骨折が臨床的な治癒を示し、治癒の適切な兆候がX線写真で見られる場合、骨折は治癒したと見なされ、患者はリハを開始します。骨折の臨床的治癒兆候を示さない場合、またはX線写真で適切な治癒が見られない場合はキャストを再装着します。または代わりに機能的スプリントやブレースを使用して、デバイスを外した時にマイルドなROMエクササイズを行うことができます。その後2週間で再評価します。

骨折の治癒は複数の生物学的および生体力学的要因に依存し、一部の患者は数回リキャストする必要があるかもしれません。骨折が治癒予定から4週間経過しても臨床的に治癒しない場合は、高度な画像検査(MRICTスキャン)と整形外科医への相談により骨治癒の追加確認を求める必要があります。

原則として、下肢のキャスティングでは、安定化と強度を最大化するために固定期間が長くなります。上肢キャスティングは、通常、ROMを維持するために固定期間を短くします。

 

ADJUNCTIVE THERAPY FOR FRACTURE HEALING

Overview and basic measures ― 骨折治癒を助けるために、いくつかの補助療法が使用されています。 詳細な議論はこのレビューの範囲を超えていますが、一般的な治療法のいくつかについて簡単に説明します。

骨折のあるすべての患者は、部位に関係なく、骨折の治癒を最大化するために、ビタミンDとカルシウムを含む良好な栄養を確保することが重要です。骨折予防におけるビタミンDの役割を支持する証拠は存在しますが、骨折急性期の治療のためのビタミンD補充の使用を支持する直接的な証拠はありません。しかし、脛骨と大腿骨の骨折のある73人の患者を対象とした観察研究では、骨折治癒の初期段階で血清ビタミンD濃度が低下していることが指摘されており、需要が高まっていることを示唆しています。活発な骨折治癒の期間中、ビタミンDの摂取を奨励するか、ビタミンDを処方することは、もともとビタミンDは一般に不足しがちであることや、害になる可能性も低いことを考えると、理にかなった慣行と言えます。ビタミンDを処方する場合、骨折治癒中の1日の用量は国際単位で1000単位が妥当です。

喫煙や過度のアルコール摂取は骨治癒を阻害します。患者は禁煙と飲酒の制限を推奨されるべきです。

 

Pharmacologic adjuncts

Systemic therapies ― 骨折治癒を促進するための薬理学的治療が幅広く研究されています。このような治療には、成長ホルモン、骨形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、血小板由来成長因子、ビスホスホネートなどがあります。 ほとんどの研究は予備的なものであり、急性骨折の治療におけるこれらの役割は推測にとどまっています。

 

Local therapies ― 多血小板療法など、骨折治癒を改善するために局所に注射または適用される治療法が調査中です。しかし、研究は予備的なものであり、急性骨折の治療におけるそのような療法の役割は推測にとどまっています。

 

Prevention of complex regional pain syndrome ― 反射性交感神経性ジストロフィーとしても知られているCRPSは、限局性の痛み、腫れ、運動制限、血管運動の不安定性、皮膚の変化、骨の脱灰を特徴とする四肢の複雑な障害です。骨折は神経損傷の有無にかかわらずCRPSの代表的な刺激因子です。ビタミンC補充を含む、この症候群を予防するための対策があります。

 

Nonpharmacologic adjuncts ― いくつかの非薬理学的介入が骨折治癒を助けるために使用されています。これらには電磁刺激と超音波があります。電磁刺激は、標準的な治療では治癒できなかった骨折に対して行われた内固定術または骨移植後の治癒を早めるために頻繁に使用されます。電磁骨刺激は、通常は手術を必要とする非定型骨折またはストレス骨折での保存的治療の試行を増強するために使用されることが多く、限られた証拠ではあるりますが、これらの介入が有効であることが示唆されています。

米国食品医薬品局FDAは、急性骨折と偽関節の治療に低強度パルス超音波(LIPUS)を承認していますが、この介入を裏付ける証拠の質については議論が続いています。648件の骨折を含む12件の研究(8件のランダム化プラセボ対照試験を含む)の系統的レビューとメタアナリシスでは、利用可能な研究が高度に不均一で方法論的に制限されている(研究方法とバイアスのリスクが不明確)ことが指摘され、骨折治癒のための超音波のルーチンでの使用は支持しないと結論づけられました。脛骨幹部骨折の500人弱の患者を対象としたその後の無作為化試験では、偽装置で治療された患者と比較して、LIPUSで治療された患者のX線による治癒または機能に差は報告されませんでした。あらゆる種類の骨折または骨切り術の患者を含む26のランダム化比較試験の別の系統的レビューでは、LIPUSは患者にとって重要な転帰(たとえば、仕事に戻るまでの時間、その後の手術の必要性)を改善しないと結論付けました。