No. 139 鎖骨骨折のリハビリテーション

鎖骨骨折のリハビリテーション

 

鎖骨骨折は全骨折の10~15%を占める比較的多い骨折ですが、回復期リハ病棟入院適応疾患ではないため、鎖骨骨折のみで回復期病棟へ入院してくることはありません。多くは他の骨折や外傷を伴う多発外傷のなかのひとつとして治療にあたることになります。

 

多くの場合、鎖骨骨折は保存療法、つまり手術せずに三角巾やクラビクルバンドなどの外固定を行い治療されます。手術が必要となるのは、転位や第3骨片が大きい場合や、骨片の皮膚への刺激や角状突出が著しい場合や、血管や神経の損傷を伴う場合、外見上の変形を本人が許容できない場合などです。ここで重要なのは、手術をしないで骨折部が癒合せず偽関節になったとしても、鎖骨の偽関節は無症状であることが多いということです。つまり折れた骨と骨をくっつけることが治療の目的ではないということです。このあたりの機能的なゴールが治療のゴールになるという考え方自体はとてもリハ的で、リハ関係者にはなじみのある考え方です。

 

鎖骨骨折で骨がつかずに偽関節になっても、困らない程度に上肢を挙上できることは珍しくありません。転位が大きい(主骨片同士の接触がない)場合に、保存療法で偽関節となる割合は10%程度と考えられています。そして偽関節となった時に追加手術が必要なものは半分程度とされているので、結局、転位のある骨折に保存療法を行った場合に後で困る割合は5%程度となります。

 

一方で、最初から手術を行った場合は、手術をすると少ないながら感染のリスクがあり、さらに手術をしても偽関節となる場合もあります。それらのリスクが3%程度と見積もると、結局、手術と保存療法の合併症リスクには大した差がありません。

 

一般に鎖骨骨折を三角巾などの外固定で治療した場合、受傷後2週でかなり痛みが軽快し、受傷後3週で水平以上の挙上が可能になります。一方、手術治療を行うと術後数日で患肢を使えるようになりますので、受傷後早期に手術を行えば、2週間程度早く痛みが取れるという利点があることになります。

 

保存療法の場合のリハビリテーションでは、レントゲンでまだ骨がついていないからといって患肢の使用を制限すると、肩関節の拘縮が起きて機能が悪くなることが多いので「万が一癒合しなくても困らないのだから、癒合しないことを恐れて肩を動かさずにいると肩拘縮が起きてそのほうがよっぽど困る」という姿勢でのぞむことが望ましいです。

 

そして回復期リハ病棟での鎖骨骨折の場合は、前述のように多発外傷の一部の場合がほとんどであり、他の外傷の治療への影響も考慮してリハのプロトコルを作成する必要があります。

 

 

参考

今日の臨床サポート:鎖骨骨折

上原大志・筒井廣明:特集 知っておきたい骨折の治療手技 II.各論 鎖骨骨折・肩関節脱臼, 関節外科Vol.31 No.10, 2012.,1116-1124.