ミニレクチャー No. 93 最適な回復期リハの在院期間は?

最適な回復期リハの在院期間は?

 

回復期リハ病棟は、入院の原因となった病気に応じて在院期間の上限が決められています(No.4参照)。しかし、これはあくまでも「上限」であって、実際の在院期間は個々の患者さんで異なり、機能を最大限まで回復し、退院後の生活にスムーズに繋げるために最適な、長すぎず短すぎない期間にする必要があります。ちなみに在院期間の全国平均は、脳血管疾患は3ヶ月、整形疾患や廃用症候群では2ヶ月で、全体としては平均72.2日となっています。

 

回復期リハ病棟の目的は「短い在院期間で身体機能を向上させて自宅へ帰す」ことで、診療報酬の仕組みも、それを促す方向に改定され続けています。社会保険国民会議では現在の在院日数72.2日から短縮して60日程度の在院日数にすることが提案されています。在院日数が短縮すれば、そのままでは患者数が減り収益も減ります。そうしないためには、新規の入院を多く確保する必要があります。

 

回復期リハ病棟へ入院する患者さんの多くは、急性期病院からの転院患者さんです。回復期リハ病棟は年々増加傾向にあり、競争は激化の一途を辿っています。一方で急性期病院は在院日数の短縮を求められているため、病態が十分に安定していない患者さんでも受け入れてくれる回復期リハ病棟に患者さんが集まってくることになります。その要請に応えるためには、回復期リハ病棟でも不安定な病態に対応できるだけの医療機器や医薬品、職員の研修、そして急性期病院との連携を強化して、質の高い医療を行えることが求められます。

 

また「入口」のみならず「出口」の整備も重要です。リハビリテーションの目標設定や計画を早期から作成し、退院後の在宅でのリハビリテーション提供体制を含めた、医療・介護サービスとの連携の強化が必要です。デンマークでの研究なので単純には比べられませんが、脳卒中患者に早期から在宅リハを行なったグループと、入院リハを行なったグループを比較すると、早期から在宅でリハを行なったグループの方が、機能障害の改善も、生活の質(QOL)もより改善し、しかも経済的であった、という報告があります。本邦のリハ提供体制の中では、在宅では十分な量のリハ提供は無理でしょう。回復期リハ入院で行うのが今のところは最善の方法だと思います。しかし今後はより在宅の方向へと舵を切られることは間違いありません。

 

以前にも書きましたが、リハビリテーションは「再びその人らしく生活できるようになる」ことです(No.1参照)。人間的な尊厳のある生活ができるようになることです。治療のために必要な場合にのみ、その様な生活を保留して入院を続けることが許されます。医学的に不必要な入院の長期化は許されません。

 

参考

公文 敦:回復期リハビリテーション病棟における医療の質と採算性に関する分析. 商大ビジネスレビュー 1(1), 159-179, 2011-09

Rasmussen RS et al : Stroke rehabilitation at home before and after discharge reduced disability and improved quality of life: A randomised controlled trial. Clin Rehabil. 2015 Mar 10.