ミニレクチャー No. 63 心臓が弱っているヒトのリハビリテーション

心臓が弱っているヒトのリハビリテーション

 

心臓が弱った状態、いわゆる「慢性心不全」と呼ばれる状態の患者さんに対しても運動療法は有効です。「心不全の人は絶対安静」はもはや過去のものです。運動療法を行った方が慢性心不全の患者さんは長生きできることが示されており慢性心不全に対する「心臓リハビリテーション」は保険適応になっています。

 

「慢性心不全」という病名は、回復期リハ病棟の適応病名ではないので(No.4参照)、心不全が主体で入院してくる人はいませんが、もともと慢性心不全があった人が、骨折や脳卒中になって入院してくる、というパターンは比較的多く遭遇します。なので、心不全のある人のリハを行う上で注意するポイントを知っておきましょう。

 

慢性心不全でも運動療法は有効ですが、運動療法が禁忌となる状態もあります(*心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2012より)

 

  1. 過去1週間以内に心不全の自覚症状(呼吸困難、易疲労性)が増悪
  2. 不安定狭心症
  3. 手術適応のある重症の弁膜症、特に大動脈弁狭窄症
  4. 重度の左室流出路狭窄(閉塞性肥大型心筋症)
  5. 未治療の運動誘発性重症不整脈(心室細動、持続性心室頻拍)
  6. 活動性の心筋炎
  7. 急性全身性疾患または発熱
  8. 運動療法が禁忌となるその他の疾患(中等度以上の大動脈瘤、重症高血圧、血栓性静脈炎、2週間以内の塞栓症、重篤な他臓器障害など)

 

一方、高齢であることや、左室駆出率が低いこと、人工心臓や除細動器が埋め込まれていることは運動療法の禁忌にはなりません。

 

また、行っている運動療法がやりすぎかもしれないと疑うときの指標には以下のようなものがあります(*同ガイドラインより)

  1. 自覚症状:倦怠感持続、前日の疲労感の残存、同一負荷量におけるBrog指数の2以上の上昇
  2. 体重増加:1週間で2kg以上の増加
  3. 心拍数増加傾向:安静時または同一負荷量における10bpm以上の上昇
  4. BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の上昇:前回よりも100pg/ml以上の上昇

 

心不全のある人は突然死の可能性があります。心不全の重症度を把握した上で、日々状態を観察しつつリハを行いましょう。

 

参考文献:亀田メディカルセンターリハビリテーションリハビリテーション 編集:改訂第3 リハビリテーション リスク管理ハンドブック, メジカルビュー, 2017.