ミニレクチャー No. 70 くも膜下出血の回復期リハでの注意点

くも膜下出血の回復期リハでの注意点

 

くも膜下出血では、急性期の治療を乗り越えて回復期リハ病棟へ移ってからも注意すべきポイントがいくつかあります。

 

脳血管攣縮

 

これは脳の血管が一時的に収縮して細くなってしまう状態で、細くなった血管の先には血流が届かず、脳梗塞が起こります。発症後数日~14日目頃までに起こるので、回復期リハ病棟に移ってくるごろにはその時期は過ぎている場合がほとんどだと思いますが、脳血管攣縮による脳梗塞の程度は予後に影響するため、脳血管攣縮があったのか、あった場合程度はどのくらいだったか確認することは重要です。

 

水頭症

 

脳と脊髄が浮かんでいる脳脊髄液は作られる量と排泄される量が釣り合っています。くも膜下出血後に排泄ができなくなり脳脊髄液が過剰になることで、脳を圧迫してしまう水頭症を発症することがあります。発症後2週間~数ヶ月後まで起こる可能性があるため回復期リハ病棟でも注意が必要です。

 

症状としては認知機能障害歩行障害尿失禁の3つが特徴的です。これら3つの症状がみられれば確定的ですが、初期には「何となく動きが最近ぎこちなくなり、全身の筋肉の緊張が高くなった気がする」といった症状がみられることが多いです。そして頭部CTを撮影すると脳室の拡大がみられます。治療は排泄できなくなった脳脊髄液を腹腔内へ逃すルートを作るシャント術(脳室腹腔シャントや腰椎腹腔シャント)が行われます。

 

全身性合併症:中枢性肺水腫、心電図異常、低ナトリウム血症

 

特に重症例で起こりやすいですが、肺水腫や不整脈心不全、呼吸不全、心筋虚血、たこつぼ心筋症などが起こることがあります。また、中枢性塩類喪失症候群や抗利尿ホルモン不適合分泌症候群SIADHによる低ナトリウム血症がみられることもあります。低ナトリウム血症では、重症になると意識障害が起こることがありますので、意識状態や尿量が異常に多くないかなど、注意して観察する必要があります。

 

参考:亀田メディカルセンターリハビリテーションリハビリテーション 編集:改訂第3 リハビリテーション リスク管理ハンドブック, メジカルビュー, 2017.