ミニレクチャー No. 39 ギラン・バレー症候群とは

ギラン・バレー症候群とは

 

ギラン・バレー症候群という病気を聞いたことがある方がいるかもしれません。先進国での、手足の麻痺が生じる病気の原因として一番多い疾患です(発展途上国ではポリオが1位)。1年間に人口10万人あたり1.5人が発症します。一生涯のうちに発症するのは1000人に1人と、かなり高い確率です。男女比は1.5:1と若干男性に多い傾向があります。

 

何らかの感染症や予防接種が引き金になって、自分自身の神経の組織を攻撃する抗体が作られることで手足の麻痺が生じます。典型的な経過はこうです。

 

風邪を引いたり、下痢になったりした後で、突然手足のしびれが出現し、次第に手足がうごかせなくなり、ひどい場合(およそ2割のひと)には呼吸のための筋にまで麻痺が生じ、人工呼吸器を使用する状態となります。一旦症状がピークを迎えると、その後麻痺は改善に向かいます。7割のひとが日常生活に支障がない状態にまで回復しますが、1~2割のひとは1年後にも歩行不能な麻痺が残存します。

 

ギラン・バレー症候群は、脱髄型と軸索型のふたつに分けれられます。脱髄型はサイトメガロウィルスやEBウィルス感染後に発症し、症状のビークまでは約18日程度であり、運動麻痺症状以外に、感覚障害や自律神経症状もみられることがあります。一方、軸索型はキャンピロバクターやインフルエンザ桿菌の感染後に発症し、症状のピークまでは10日程度で、症状は純粋な運動麻痺のみであることが多いです。

 

また、世間一般には一度かかると再発しないという情報も流れていますが、5%の人に再発があります。ギラン・バレー症候群そのもので亡くなる方はいませんが、呼吸筋の麻痺まで生じた場合に、肺炎で死亡することがあり全体の死亡率としては5%程度です。

 

急性期の治療としては、免疫グロブリン療法や血漿交換療法が行われます。状態が安定したあとは、リハビリテーションが治療の中心となります。ミニレクチャーNo. 33のCIDPと同じ様に、やりすぎに注意しつつ運動療法を行います。また、筋力の改善を目的とする理学療法だけでなく、作業療法心理的支持療法、言語・嚥下訓練など、個々の患者の状態に応じた多面的なケアが重要です。また麻痺が残存し日常生活に支障がでる患者さんが一定の割合でいますが、年単位でみると少しずつ改善する疾患でもあります。したがって、回復期リハ病棟の入院期間内だけでは、すべての問題が解決しない場合もあり、長期的な経過観察とリハビリテーションが必要です。

 

参考文献

桑原 聡:神経内科ポケットリファレンス, 初版, 2010, 中外医学社.

Web:本日の臨床サポート