ミニレクチャー No. 40 骨粗鬆症性椎体骨折とは

骨粗鬆症性椎体骨折とは

 

骨粗鬆症性椎体骨折(=脊椎圧迫骨折)は、高齢者で最も頻度の高い骨折で、70歳以降に急増し、80~84歳で40%を超えます。転倒によるものもありますが、とくに思い当たる様な原因がなく突然の腰痛で始まることもあります。腰背部の痛みは、動いた時に痛みがあり、安静にしていると軽快します。痛みの程度は様々で、痛くて座ることすらできない人もいれば、日常生活が自立したままのひともいます。また、1/3の人は痛みがありません。

 

症状は他にもあり、椎体の骨折・変形により姿勢異常、いわゆる背中の丸くなった高齢者の姿勢になることで、バランスが悪くなったり、胸郭・横隔膜の動きが制限されることで心肺機能が低下したり、消化管が圧迫されることで逆流性食道炎が起こりやすくなります。また変形した椎体がすぐそばを走る神経を圧迫してしまうと、下肢の神経麻痺や神経痛を起こすこともあります。

 

椎体骨折を引き起こす危険因子としては、加齢、やせ、脆弱性骨折の既往、両親の大腿骨近位部骨折歴、ステロイド薬治療、現在の喫煙、アルコールの過剰摂取、未治療の性腺機能低下、炎症性大腸疾患、長期間の不動、臓器移植、糖尿病、甲状腺疾患、慢性閉塞性肺疾患などがあります。

 

Denisの3-columns theoryという脊柱を前方、中央、後方に分けて、どの場所が骨折しているかによって、椎体骨折を分類する方法があります。前方のみ、または後方のみがつぶれた骨折は安定型に分類されます。それ以外の骨折や、神経症状がある場合は不安定型に分類され手術が必要な場合があります。

 

安定型骨折の治療の第一選択は保存療法で、コルセットを装着し骨折がさらに進行しない様にしつつ、痛みや安静臥床による廃用症候群を予防するために、離床・運動療法を行います。一方で不安定型の骨折の場合は手術が行われます。手術方法はいくつかあり、除圧術や、椎体形成術:BKP(balloon kyphoplasty)、ハイドロキシアパタイトブロック充填法、リン酸カルシウムセメント充填法などがあります。術後も早期離床を行い廃用症候群の予防に努めます。

 

リハビリテーションは初めの2週間はベッド上から開始し、2週経過した頃から座位、3週経過したころから立位・歩行練習を開始し、ADLの拡大を図ります。痛みは時間経過とともに徐々に軽くなり、およそ4週間程度でほぼ消失します。保存療法の場合のコルセット装着は多くの場合3ヶ月程度行います。また最近は骨密度を増加させ再骨折を予防する効果のある薬が多数開発されています。