ミニレクチャー No. 97 Critical illness polyneuropathy and myopathyとは?

Critical illness polyneuropathy and myopathyとは?

 

critical illness polyneuropathy and myopathy:CIP/Mとは、日本語にすると重症疾患多発神経障害および筋障害と言い換えれらます。ただニューロパチーやミオパチーは〇〇障害と訳すとややニュアンスが異なるため、訳さずにそのまま使われることが多いので、「重症疾患多発ニューロパチー/ミオパチー」と言います。

 

これは、集中治療室での治療が必要な様な重症な状態、例えば急性呼吸促迫症候群、敗血症、全身性炎症反応症候群、多臓器不全、などの患者さんに起こる合併症のひとつです。この様な重症な状態になった後から四肢の麻痺が生じて、重症な場合には呼吸筋の麻痺も起こり人工呼吸器が長期必要となることもあります。

 

似たような疾患にギラン・バレー症候群というものがあります。ギラン・バレー症候群腸炎や上気道炎の後に身体の麻痺が起こり、同じように重症な場合には呼吸筋も麻痺する病気です。ギラン・バレー症候群による麻痺は、75%の人が元どおりに改善するとされています。CIP/Mもギラン・バレー症候群と同じように徐々に麻痺は改善すると言われていますが、CIP/Mの場合は元どおりに改善する割合が50%程度とされています。 

 

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CIP/Mに対しては、集中治療室にいる時からの早期のリハビリテーションが推奨されています。リハビリテーションによって機能回復が促進され、機能的自立の獲得に繋がり、しかも人工呼吸器の使用期間や入院期間が短縮されるという報告があります。特に、初期段階で随意的な運動が出来ない時から、筋への電気刺激療法が推奨されています。患者の随意的な参加を必要としないことや、心不全COPD患者などで有効性が示されていることがその理由です。

 

電気刺激療法では両側の外側広筋、内側広筋、長腓骨筋に対して同時に刺激を行います。刺激強度は視覚的に筋収縮が認められる程度で行い、施行中の関節角度は膝関節屈曲40度程度で、実施時間は55分(5分のウォームアップと5分のクールダウンを含む)です。電気刺激療法の効果は、筋肉量の維持改善・筋力増強はもちろんですが、さらに組織の微小循環の改善による修復促進効果の存在も示唆されています。

 

参考文献:

Zhou C, Wu L, Ni F, Ji W, Wu J, Zhang H. Critical illness polyneuropathy and myopathy: a systematic review. Neural Regeneration Research. 2014;9(1):101-110. doi:10.4103/1673-5374.125337.