ミニレクチャー No. 58 パーキンソン病について

パーキンソン病について

 

パーキンソン病は「安静時振戦」「無動・寡動」「筋強剛」「姿勢反射障害」の4つの症状が出現し、ゆっくりと進行する病気です。このパーキンソン病に特徴的な症候群を「パーキンソニズム」といいます。パーキンソン病の他にもパーキンソニズムを起こす疾患はたくさんあります。進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、薬剤性、脳血管性のものなどです。パーキンソン病の場合は、これらの目立つ運動症状の他に、自律神経症状(起立性低血圧、便秘など)、嗅覚障害、精神症状、睡眠障害(レム期睡眠行動異常症)、四肢のこわばりや痛み、などの症状を伴います。

 

中高年での発症が多く、70歳以上の100人に1人パーキンソン病であり、加齢とともに増える疾患です。中脳黒質ドパミンニューロンが変性・脱失することで脳内のドパミンが不足することが主な原因とされています。ですので、薬としてL-ドパ(ドパミンの前駆体で体内に吸収されたあとでドパミンになる)を補充することで症状が軽減されます。しかしL-ドパは長期間使用すると薬の効果が減弱し、薬が効いている時間が短縮する(wearing off現象といいます)、ジスキネジア(意思に反して手足が勝手に動くこと)などの運動合併症が発現してしまいます。早期パーキンソン病で運動合併症の発現リスクが高い場合については、ドパミンアゴニストあるいはモノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬など、効果はL-ドパよりもやや劣るものの運動合併症を生じにくいものを選択することが推奨されています。

 

今年5月に「パーキンソン病診療ガイドライン2018」が7年ぶりに改訂されました。その中で注目されているのが、パーキンソニズムの定義が変更された、ということです。今までパーキンソニズムは上記の「4大症候」うち2つ以上が存在すること、と定義されていました。今回のガイドラインでは、「無動・寡動」が見られることを必須の条件とし、加えて「安静時振戦」「筋強剛」のどちらか、あるいは両方が見られるものをパーキンソニズムと定義することになりました。つまり、今まであった「姿勢反射障害」が定義から外されたのです。

 

これは、姿勢反射障害は進行してから出現することが多く、早期から出現する場合は、他の疾患の可能性が高いことが分かってきたためです。つまり、今回の定義の改定は、より早期に診断を下して早い段階からL-ドパによるドパミン補充療法を行うことを推進することが目的です。病気の定義はその時代の治療や診断の技術とともに変化するのです。しかしいくら薬による治療を行っても、発症から15年経過すると約4割の患者さんが、日常生活に介助が必要になると言われています。したがって薬物療法のみならず、運動療法や、社会資源の活用など多方面からのアプローチが必須です。

 

参考文献:パーキンソニズムの定義変更、早期からL-ドパを:日経メディカル https://medical.nikkeibp.co.jp