ミニレクチャー No. 92 感染対策:風邪を予防するには?

感染対策:風邪を予防するには?

 

最近寒くなってきて、ちょっとした風邪が流行ってます。仕事を休むほどではないけど、鼻水や咳が出てなんとなくだるい、という人いませんか?風邪は正しくは上気道の感染症で、ほとんどがウィルス感染によるものです。ですので抗菌薬は無意味ですし、いわゆる風邪薬も症状を緩和するだけで、治す効果はまったくありません。家であったかくしてゆっくり寝るのが一番なのですが、なかなかそうも行かないのが辛いところです。

 

風邪は、風邪を引いた人が咳をして、空気中に撒き散らされる飛沫に含まれるウィルスを、別の人が吸い込むことで感染します。他には手からの感染もあります。たとえば咳をして手に病原体が付着して、キーボードを扱ったりして、それをほかの人が触る。そして口に持っていってうつるといった具合です。ウィルスは人の体の中にいなければ生きていけませんが、外界でも数時間は生存しています。

 

風邪を予防するための方法が色々と言われていますが、どのくらい効果があるでしょうか?まずよく予防のために推奨される手洗いですが、いわゆる一般の人が行う「ふつうの手洗い」では意味がありません。やるなら、いわゆる院内感染のために行うしっかりとした手指衛生を行えば、すこしは効果があります。指の間や、爪の先、親指と人差し指の間などの病原体が残りやすいところまで徹底的にきれいにします。15秒以上はかかります。石鹸よりも手指消毒用アルコールの方が効果的です。

 

抗菌シートのようなグッズははほとんど意味がないです。空気清浄機も加湿器も風邪の予防という点ではほぼ意味はありません。マスクも、元気な人が風邪予防で日常的にマスクをつける効果はほぼないです。ただし明らかに風邪をひいている人に接する時に予防のためにマスクをして診察や治療、ケアをすることは多少の意味があります。それよりも、風邪をひいている人が、ほかの人にうつさないようにするためにマスクをするほうが有効です。また、咳をするときに口元を腕で覆うことも病原体を拡散させないために有効です。大事なのは手のひらで覆うのではなく「腕(肘の内側あたり)」で覆うのがポイントです。手のひらで覆うとその手に病原体が付着して、その手で触ったものを介して他の人にうつす可能性があるからです。

 

うがいは1日3回、1回15秒ぐらいやれば、ある程度効果があるというデータがあります。15秒は結構長いですが、手洗いもキチンとすれば15秒かかるので、手洗いの間中ずっとうがいするようにすれば時間の節約になるかもしれません。ちなみにうがい薬は使わない方がいいです。なんとなく清涼感があるので良い感じがしますが、含まれる消毒成分で粘膜が傷つきます。やるのであれば普通の水道水がよいです。風邪は治ったけど咳がずっと残るという人がいます。そんな時は夜寝る前にはちみつを舐めると咳がはやく治るというデータがあります。

 

参考

ほぼ日刊イトイ新聞 感染症のプロ・岩田健太郎先生に聞いた 頭がすっきりする風邪の話。https://www.1101.com/kaze_a/index.html