No. 145 鼻出血
鼻出血
60%の人が一生のうちに鼻出血を経験するとされており、そのうちの約6%が医療機関での治療を必要とするそうです。
鼻出血の80-90%は鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位(図1)からの出血です。
その場合正しい圧迫を行えば止血することができます。鼻出血の止め方については、世の中に色々と間違った方法が広まってますが、医療従事者として正しい方法を知っておきましょう(図2)。前方からの出血の場合は、手で鼻翼を10~15分しっかり押さえます。ほとんどの場合これで止血されます。
鼻から垂れるのをさけるためといって上を向いてはいけません。上を向くと血液が咽頭に流れ込み、嘔吐や誤嚥に繋がります。また首をたたいても意味はありません(図3)。
止血が困難な場合、血管収縮薬(ボスミン:救急カートにあります)を染み込ませた綿球やガーゼを鼻腔に詰めて圧迫することで止血効果が高まります。
まれですが後方からの出血の場合には、後鼻タンポン法などの処置や耳鼻 科的な処置が必要になることがあります。バルーンタンポン法を行いつつ、耳鼻科受診へつなぎます。使用するバルーンは、鼻出血用の専用品も世の中にはありますが、14Fr程度の尿道バルーンカテーテルで代用できます(図4)。
高齢者では、出血によってプレショック、またはショック状態になることもあるので、バイタルサインのモニタリングや、血管確保、輸液、昇圧薬などの対応が必要な場合もあります。
注意点として処置中は、手袋、マスク、ゴーグル、ガウンなどを装着して感染予防策をしっかりと行うことです。
そして止血の目処がたったら原因について検討します。出血の原因は、鼻ほじりや鼻中隔弯曲症などの局所の原因によるものと、肝・腎機能障害やアスピリンの服用などの全身的な原因によるものがあります。ワルファリンやア スピリンなどの抗凝固薬や抗血小板薬を服用している場合には、PT-INRやAPTTをチェックします。
参考:
今日の臨床サポート:鼻出血
北野正剛 監修:ひとりでこなす外科系外来処置ガイド, メジカルビュー, 2013