ミニレクチャー No. 42 脳卒中 その1

脳卒中 その1

 

脳卒中は回復期リハ病棟に入院する疾患の代表です。脳卒中について話そうとすると、A4一枚では絶対に書けないので、先延ばしにしてきました。何回かにわけてシリーズ化してお届けします。第一回目はあまりおもしろくはないですが、色々ある病名について簡単にまとめます。

 

脳卒中」は「脳血管障害」ともいいます。脳の血管が「つまる」が「やぶける」かして脳の正常な血流が保てなくなった状態を指します。つまるかやぶけるかした血管の先には血液が届かなくなります。脳細胞は常に血液によって酸素と栄養が供給されていないと死んでしまいます。脳卒中では、死んだ脳細胞が担っていた機能が失われることで身体の障害があらわれます。

 

血管が詰まった場合を「脳梗塞」といい、やぶけた場合を「脳出血」「くも膜下出血」といいます。脳出血は出血が脳の中におこったものを指し、くも膜下出血は出血が脳の表面を覆うくも膜という膜の下の、くも膜下腔におこったものを指します。

 

さらに脳梗塞は血管が詰まった原因によって分類され、動脈の内側にアテロームというコレステロールなどがくっついて動脈が狭くなり詰まってしまった「アテローム血栓脳梗塞」と、心臓の病気で心臓の中に血栓ができて、それが脳の動脈にたどり着いて詰めてしまう「心原性脳塞栓症」、脳の細い動脈が加齢や脂質異常症、高血圧にともなう変性により詰まってしまう「ラクナ梗塞」があります。

 

脳出血は出血の原因による分類(高血圧性、アミロイドアンギオパチー、脳動静脈奇形、もやもや病、海綿状血管腫)もありますが、回復期に入院する段階では、むしろ出血の起こった場所による分類の方が障害に直結するので重要です。「被殻出血」「視床出血」「皮質下出血」「脳幹部出血」などがあり、出血の起こった場所と出血の大きさによって症状や今後の回復の程度がある程度予測できます。

 

くも膜下出血の原因は、脳動脈瘤という動脈のこぶが破裂することによるものが多く、そのほかには、脳動静脈奇形や脳腫瘍、もやもや病、そして事故などによる頭部外傷によるものがあります。

 

脳卒中は日本の死因の第3位です。そして要介護状態になる原因の第1位です。急性期病院で亡くなる人と後遺症が殆どない人は回復期には入院しないので、回復期リハ病棟に入院してくる脳卒中の患者さんは、必然的に日常生活に介助が必要な人がほとんどですので、適切な、それぞれの人に個別性のあるリハを提供する必要があります。

 

参考文献

千野 直一 編:現代リハビリテーション医学 第3版, 金原出版, 2009.