ミニレクチャー No. 69 くも膜下出血について

くも膜下出血について

 

くも膜下出血とは、くも膜と軟膜の間(くも膜下腔)に出血が生じ、脳脊髄液中に血液が混入した状態です。典型的には、突然起こった人生最悪の頭痛で発症します。ただし、軽い場合や、本格的な出血の前のごく少量の出血(警告症状といいます)では頭痛は一時的で、めまいや悪心・嘔吐、意識消失が主な症状のこともあります。また、項部硬直は有名な症状ですが、発症直後はみられないことも多いです。

 

診断はCT検査でくも膜下腔の出血を検出することで確定します。ただしCTは発症後12~24時間の感度はほぼ100%ですが、時間経過とともに低下し、2日目で76%、5日目で58%まで低下するとされています。ですので、症状出現から時間の経過した患者さんでは頭部CTで明らかな出血を認めなくても、臨床症状からくも膜下出血が疑われる場合には、腰椎穿刺を行い脳脊髄液に血液が混じっていないか確認する必要があります。しかし、腰椎穿刺は頭蓋内圧が亢進している場合は禁忌で、また穿刺の疼痛が再出血の誘引になる可能性もあることから、施行に際しては十分な鎮痛・鎮静下に行う必要があります。MRIは、CTと比べて急性期の診断率では劣るとされていますが、微小な出血や時間の経った時期においては有用です。

 

くも膜下出血は、その原因により「外傷性」と「非外傷性」に分けられます。頻度としては外傷性のものが多いですが、外傷性くも膜下出血脳挫傷からの出血がくも膜下腔に流入し血腫を形成したもので、くも膜下出血そのものは軽度であることが多いです。非外傷性のくも膜下出血の原因としては、脳動脈瘤の破裂が一番多く70~80%を占めます。脳の動脈にできた脳動脈瘤が破裂して起こります。脳動脈瘤破裂以外の原因としては、動静脈奇形、もやもや病、頭蓋内腫瘍、出血傾向、血管炎などがあります。

 

動脈瘤ができる原因は、様々な要因が考えられていますが、家族性脳動脈瘤(2親等以内)が4~10%あります。これは遺伝的な要因と環境の要因がともに関与すると考えられています。くも膜下出血と診断されたら脳動脈瘤を探すために脳血管造影検査が行われます。そして、脳動脈瘤の再破裂予防がきわめて重要であり、再出血予防処置として開頭クリッピング術や、コイル塞栓術などが行われます。

 

くも膜下出血の死亡率は10~67%と報告されています。とくに大量の脳室内出血や脳内血腫を合併した例では死亡率が高いです。経過中に予後を悪化させるものとしては、再出血と遅発性脳血管攣縮があります。その他、予後に影響を与える因子としては高齢、高血圧症、脳血管障害の既往、動脈硬化症、アルコール摂取などがあります。

 

参考:今日の臨床サポート https://clinicalsup.jp/