ミニレクチャー No. 32 そのひとは在宅へ帰れるのか?

そのひとは在宅へ帰れるのか?

 

回復期リハ病棟に入院する患者さんは自宅退院を目指しています。制度上も在宅復帰率といって自宅(またはそれに準じる施設)へ退院する患者さんが一定の割合に達している必要があります。自宅退院できるかどうかは、患者さんの回復の程度によるところが大きいですが、ICFでいうところの「環境因子」による影響も大きく受けます。

 

なかでも家族の介護力がどのくらいあるのか、ということが患者さんの障害の重症度以上に重要になります。家族の介護力を評価する方法として、「在宅介護スコア」というものがあります。 

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このスコアの合計が11点以上では在宅介護の可能性あり、10点以下では介護保険の導入必須と判断されます。また在宅介護スコアが低いほど、介護保険サービスをより多く利用する必要があり、6点以下では、限界家族、破綻のリスクあり、と判断されます。ここでの限界家族とは「介護家族の成立に必要な要件を限界的に満たすが、病状・環境・介護などの諸条件の悪化により、家族としての社会生活の維持が困難となり、崩壊する可能性のある家族」と定義されています。最近は、高齢者の独居や夫婦二人暮らしが増え、この限界家族に該当する患者さんが多く存在します。適切な退院支援のためにも患者さんの評価のみならず、家族や生活環境の評価も行うことが重要です。

 

参考文献:

宮森 正 ほか:在宅介護スコアによる家族介護力評価と在宅ケア支援, Jpn J Cancer Chemother 36(Suppl I): 33-35, 2009.