ミニレクチャー No. 31 気管切開カニューレの管理はどうすればよいか?

気管切開カニューレの管理はどうすればよいか?

 

人工呼吸管理が長期化することが予想される場合、口や鼻からの挿管による気道確保ではなく気管切開が行われます。カニューレは、気管切開孔に挿入するL字型に曲がったチューブです。カニューレにはいくつか種類があり、カフの有無、単管や複管(2重になっている)、側孔のあるなし、吸引用のラインの有無、話すことができるかどうか、など構造・機能に違いがあり患者さんの状態に応じて選択します。

 

人工呼吸器が必要な時期にはカフ付きのものを使用します。人工呼吸器から離脱できた後も、しばらく気管切開カニューレが必要な場合があり、完全に抜去できるまでの間に、状態に応じてカニューレを変更します。まずは嚥下機能の評価を行い、誤嚥の有無を評価します。誤嚥がなければ、カフを脱気して発声の練習を行います。場合によっては、発声が可能なスピーチカニューレに変更します。気管切開孔からの喀痰の吸引が必要なくなり、誤嚥もなく、喀痰の自力での喀出もできれば気管切開カニューレの抜去も可能です。

 

主な気管カニューレの種類

  • カフなし単管:気道確保と喀痰吸引
  • カフ付き単管:人工呼吸、誤嚥防止
  • カフ付き複管:人工呼吸、肺炎予防、発声、会話
  • その他:レティナなど

 

カニューレの長期使用によりいくつかの合併症が起こることがあります。誤嚥を恐れるあまりにカフに空気を入れすぎて、気管の粘膜が圧迫され壊死し気管食道瘻を形成してしまうことがあります。カフの膨らませ過ぎには注意が必要です。予防するにはカフ圧計を用いて圧を測定するのが確実です。カフ圧計がなければカフ漏れしないぎりぎりの圧にします。他には、カニューレが患者さんに合っていないために、カニューレの先端などが粘膜に接触して刺激を与え、その部位に肉芽を形成することがあります。肉芽が形成されると気道狭窄やカニューレの抜去困難の原因になることがあります。

 

気管切開カニューレ使用時の注意点

  • カフ圧:漏れてないか? 圧が高過ぎないか?
  • カニューレの閉塞:吸引は適正か?
  • カフ上吸引付きでは、必ずカフ上も吸引する
  • カニューレの自己、または自然抜去
  • カニューレが深すぎると、片肺になるおそれがある
  • 交換頻度は適正か?
  • 交換時期でなくても、カニューレ汚染の進行を考慮して交換する
  • ストラップは固定されているか?

 

参考文献:

泰川恵吾:ドクターゴンの知っておきたい在宅医療の機器・材料, 薬事日報社, 2017.

工藤翔二:チーム医療のための呼吸ケアハンドブック, 医学書院, 2009.