No. 161 大腿切断:義足装着前段階のリハビリテーション

切断術のあとから実施すべき事には、創傷のケアと治癒、痛みの管理、浮腫の抑制、筋力増強とROM運動の開始、残存肢と義足についての教育、心理カウンセリングなどがあります。

 

残存肢の浮腫制御の方法には、ソフトドレッシング、弾力包帯、セミリジッドドレッシング、リジッドドレッシング、着脱式リジッドドレッシング、石膏ギプス、義足の術後即時装着、などがあり、いずれの方法も浮腫を制御できるだけでなく、痛みを軽減し外傷から残存肢と手術部位を保護することができます。どの方法を選択するかは、外科医の好みやスタッフがどの方法に精通しているかなどの要因によって決まります。これらの方法の有効性を調べる研究では、セミリジッドや着脱式セミリジッドのドレッシングが、弾力包帯などよりも浮腫抑制に大きな効果があると結論付けていますが、差があるのは最初の数週間のみで、その後はどの方法でも大差ありません。また、浮腫の制御にくわえて、残存肢の形つくりも重要です。大腿切断の場合は円錐形が理想的です。残存肢の定期的な円周測定を行って、体積を評価しフィッティングの準備ができているかどうかを判断します。

 

患者にベッド上や車椅子上での正しい姿勢について教育することで股関節の屈曲拘縮を予防します。ROMは定期的にゴニオメーターでチェックすべきです。股関節屈曲拘縮の有無はトーマステストで評価できます。残存肢の股関節屈曲拘縮は義足の装着を難しくする可能性があり、股関節屈曲拘縮が15度を超えると、義足装着が困難になります。

 

切断術後しばらくは車椅子が移動手段になることが多いですが、下肢を失ったことで、重心の位置が後方に変化するため、後輪の車軸も後方に移動して安定化させることが必要かもしれません。片足でのバランスがよい人では松葉杖や歩行器での歩行も可能です。ただし、義足なしでの歩行能力は、義足歩行訓練前に必須のことではありません。