No. 156 リウマチ性多発筋痛症 Polymyalgia rheumatica (PMR)

リウマチ性多発筋痛症 Polymyalgia rheumatica (PMR)

 

リウマチ性多発筋痛症PMRは慢性の炎症性疾患で、くびや肩、おしりの筋肉に痛みが生じ、その周辺の関節のこわばりを特徴とします。PMRの原因はわかっていませんが、冬に発症することが多く、何らかの感染症に伴って発症する例もあります。50歳より高齢の人に生じることがほとんどで、患者の平均年齢は73歳と高齢者の疾患です。ちなみに似たような名前の病気で同じように痛みが主な症状である疾患に「関節リウマチ」がありますが、こちらは高齢になってから発症することは滅多にない疾患です。生涯でPMRを発症する率は女性で2.4%、男性で1.7%とやや女性に多いです。16~21%に巨細胞動脈炎(側頭動脈炎)を合併しています。また巨細胞動脈炎とは、側頭部の表面に走る側頭動脈に炎症が起こり、まるでドラ◯ンボールのピ◯コロ大魔王のように側頭部に血管が浮き出て、そこに痛みを伴います。巨細胞動脈炎の患者の40~60%にPMRを合併しています。

 

PMRの診断基準は確立されていません。以下の所見が高齢者で認められた場合に疑います:

・頚部や肩や臀部の筋痛が2週間以上続く

・頚部のこわばりがあり、特に朝に強い

・赤血球沈降速度やCRPが亢進している

また、倦怠感や食欲不振、微熱などの全身症状が40~50%の患者で認められます。頭痛や顎関節痛、視覚障害を認める場合は巨細胞動脈炎の有無を確認します。巨細胞動脈炎は放置すると失明する場合があるので注意が必要です。PMRでは、関節リウマチで陽性になるリウマチ因子や抗CCP抗体、抗核抗体はふつう陰性です。これらが上昇している場合は他の疾患を考えます。PMRでは低用量コルチコステロイド投与で迅速な反応が得られるのが典型的で、診断的治療としてプレドニゾロン15mg/日を開始し、それに対する反応がイマイチな場合は他の診断を検討する必要があります。

 

ステロイド治療を開始したら徐々に1-2年かけて減量します。理想的なステロイドの使用法は確立されておらず、個々の患者さんに応じて対応する必要があります。ステロイド開始時は12.5-25mg/日の経口プレドニゾロンが推奨されています。糖尿病や骨粗鬆症緑内障のような合併症がありステロイドの副作用が問題になる場合はより少ない量から開始します。推奨されている方法は以下の通りです:

プレドニゾロン15mg/日を3週間

・その後12.5mg/日を3週間

・10mg/日を4-6週間

・以後は4-8週に1mg/日ずつ減らす

ステロイド治療開始と共に骨粗鬆症予防の治療を開始します。PMRが再燃した場合は以前の量に戻すか120mgのメチルプレドニゾロンを筋注します。

 

またPMRがあると、脳卒中発症リスクが高くなるという報告があります(ハザード比2.09、95% CI 1.63-2.66)。

 

参考:DynaMedより