No. 151 口腔咽頭の加齢変化とその対応

口腔咽頭の加齢変化とその対応

 

加齢に伴う口腔咽頭の変化として代表的なものに喉頭の下垂があります。喉頭の下垂によって舌骨も下垂し、その結果、舌根も下方へと引き下げられます。この変化は男性においてより顕著で、舌骨上筋群が喉頭の重みを支えることが困難となることで生じるとされています。舌骨は若年者では下顎骨の下縁もしくはその上方に位置していますが、加齢とともに1椎体程度下垂するとされており、高齢者では舌骨を容易に触知することができます。

 

加齢によって生じた喉頭の下垂に対しては舌が筋線維を太くしたり脂肪を蓄積することで広がった空間を補い明らかな嚥下障害には繋がりませんが、病気などで急激に体重が減少した場合や低栄養によるサルコペニアにより舌の筋量が減少すると、口腔や咽頭腔が広がり、結果として食塊を咽頭から食道へ送り込む圧が低下して、咽頭残留が増加するなどの摂食嚥下障害を引き起こします。舌の筋量や筋力は舌圧によって把握することができます。

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*参考文献より

 

舌圧が低下した場合、舌骨上筋群を鍛える運動、シャキア法(仰臥位で頭を上げて1分間保つ運動を30回繰り返すのを1クールとして1日3クール実施する)や嚥下おでこ体操(額に手を当てて抵抗を加え、おへそを覗き込むように強く下を向く運動を5秒間×10回、毎食前に行う)などを行います。また舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis : PAP)が有効な場合があります。また歯のない高齢者では、義歯を装着することでも舌運動や食塊の送り込みが改善することがあります。

 

参考文献

吉田 光由:特集 高齢者の口腔機能-オーラルフレイル- Seminar 5. 口腔咽頭の加齢変化とその対応, Great. Med. 56(8): 749-753, 2018.