No. 159 大腿切断:残存肢の皮膚のケア

切断患者にとってスキンケアは最重要課題であり、医療従事者と患者の両方が取り組む必要があります。特に患者自身が毎日皮膚の状態をチェックし、問題が発生したらすぐに解決手段をとる習慣を早期に身につける必要があります。皮膚トラブルは、放置しておくと敗血症やさらなる切断術を必要とするなどの大きな問題を引き起こす可能性があるため侮ってはいけません。

 

推奨される残存肢のケアは以下の通りです:

  • 毎日(できれば夕方に)、石鹸と水で洗浄して軽く乾かす
  • 義足を着用していない時は、腫脹を最小限にするために、シュリンカーまたは弾性包帯を使用する
  • 義足着用後は、皮膚がむけたり、水ぶくれや発赤がないかどうか観察する
  • 傷があったり20分以内に消失しない発赤がある場合は義足を着用せず2日以内に専門家に相談する
  • 大腿切断の場合は関節拘縮を防ぐために、ベッドで枕を残存肢の下またはあしの間に置かない
  • 断端が見えにくい場合は、鏡の使用するなどして、皮膚を1日に12回はチェックする

 

また、皮膚のチェックは反対側のあしも同時に行う必要があります。閉塞性末梢動脈疾患による切断者の場合は反対側のあしにも切断のリスクがあり、反対側の切断が必要となることはまれではありません。

 

残存肢にみられる病態として、アレルギー性接触皮膚炎、先端血管炎、表皮過形成、濾胞性過角化症、水疱性疾患、感染症、悪性腫瘍があります。とくにアレルギー性接触皮膚炎は、義足ユーザーにみられる皮膚トラブルの3分の1を占めます。残存肢の遠位端に不適切なソケット圧があると、疣贅(いぼ)が発生することがあります。シュリンカーやソケットを改修して適切な圧力を遠位端に加えることで、改善することがあります。また外用抗菌薬による細菌の異常増殖抑制も役に立ちます。

 

切断者の約3050%で義足使用による残存肢に過度の発汗があり、義足の使用を妨げることがあります。これは幻肢痛や残存肢痛にも悪影響を及ぼす可能性があるとされています。小規模の非対照試験では、ボツリヌス毒素B型の注射により、幻肢痛や残存肢痛、発汗減少に効果が認められました。

 

異所性骨化は、多能性間葉系細胞の骨芽細胞への変換の結果として生じ、正常な骨構造でない場所で異常な骨形成を引き起こします。残存肢の異所性骨化は、切断から数週間から数ヶ月後に発生します。無症候のこともありますが、強い症状を引き起こすこともあり、義足適合に大きな問題を引き起こす可能性があります。ただし、まれに異所性骨化が有益に働き、適合がよくなることがあります。異所性骨化の診断は、特徴的な症状の評価、身体診察、画像診断によって行われます。特徴的な主訴および検査所見には、痛みの変化、関節可動域の減少、手足のむくみや熱感、およびソケット適合の変化が含まれます。画像検査には、単純X線、CTMRI、三相骨スキャン、超音波が含まれます。血清アルカリホスファターゼのレベルは活動期から静止期までモニターできますが特異性は限られています。異所性骨化の形成または進行を防ぐために、非ステロイド性抗炎症薬、ビスホスホネート、放射線療法が用いられます。異所性骨化が進行すると外科的切除も考慮されます。多くの場合はソケットの変更が必要です。

 

参考文献:David X. Cifu : Braddoms Physical Medicine & Rehabilitation 5th Edition