高齢者
New horizons in multimorbidity in older adults Alison J Yamall et al. Age Aging. 2017 Nov; 46(6): 882-888. マルチモビディティ(多疾患併存状態)という概念が最近注目を集めており、最近、英国国立医療技術評価機構(NICE)がマルチモビディティに関する…
Up to Dateという様々なトピックについて最新の論文をもとにまとめたサイトの高齢者総合機能評価の項のほぼ全訳です。 はじめに 高齢者の機能障害や認知症は、ともすると見逃され十分な対処がなされないことが少なくありません。しっかり評価して状態を把握…
Hip Fractures in Older Adults in 2019 JAMA. 2019;321(22):2231-2232. doi:10.1001/jama.2019.5453 骨粗鬆症による脆弱性骨折の発生率は加齢と共に指数関数的に増加し、その結果、機能低下や施設入所、死亡、困窮などの悲惨な結果へとつながります。 80~9…
長谷川式簡易知能評価スケール 医療従事者であればほとんどの人が「長谷川式簡易知能評価スケール」を知っていると思います。1974年に作成され、1991年に採点基準を見直された改訂版「HDS-R」が現在は広く使われています。9項目30点満点の検査で短時間で認知…
薬剤による認知機能障害 加齢とともに複数の疾患を患い多数の薬を飲むことになり、さらに薬物代謝能力が低下することで、薬の作用が増強されやすくなり、様々な影響があらわれます。このような状態を「薬剤起因性老年症候群」といい、ふらつき、転倒、食欲低…
口腔咽頭の加齢変化とその対応 加齢に伴う口腔咽頭の変化として代表的なものに喉頭の下垂があります。喉頭の下垂によって舌骨も下垂し、その結果、舌根も下方へと引き下げられます。この変化は男性においてより顕著で、舌骨上筋群が喉頭の重みを支えることが…
大腿骨近位部骨折の非手術例 No.75で大腿骨近位部骨折を受傷した人では死亡率があがるという話をしました。 uekent.hatenablog.com またNo.89で大腿骨近位部骨折の手術は早期に行った方が成績が良いという話をしました。 uekent.hatenablog.com 今回は大腿骨…
高齢者の食欲不振 食欲不振に対するアプローチの流れ 高齢者でのある程度の食欲低下は生理的な反応でもあります。食欲を引き起こす消化管ホルモンの分泌は低下し消化管運動は低下します。高齢者の摂取エネルギーは30代成人の1/3程度であったとの報告もありま…
栄養療法 ー入院高齢者の低栄養についてー はじめに “hospital malnutrition”という言葉があることからもわかるように、入院患者の栄養不良の発症率は3~5割と言われており、特に回復期リハ病棟では低栄養の発症率が高いという報告もあります。そもそも、な…
高齢者の脱水 体の中の総水分量は年齢とともに減少します。細胞外液(≒血管の中を流れている水分)の量は高齢者でもそれほど減少しませんが細胞内液が減少します。これは、年齢とともに水分を多く貯蔵できる筋肉の細胞が減少し、水分を維持しにくい脂肪細胞が…
高齢者の糖尿病は積極的に治療しないほうがよい? 糖尿病は、尿に糖が含まれることからついた名前ですが、本当のところの問題は、血液の中に過剰な糖が存在することにあります。糖が多量に血液の中にあると血管の壁を内側から傷つけ、様々な病気の原因になり…
大腿骨頚部骨折の手術は早めに 高齢者では、転倒して大腿骨頚部骨折をおこすひとがたくさんいます。回復期リハ病棟に入院している患者さんでも、あってほしくはないですが、転倒してしまい不幸にも大腿骨頚部を骨折してしまう場合があります。こんな時は、手…
入院中の高齢者の転倒予防 入院中の高齢者は転倒のリスクが高いです。疾患がある上に、慣れない環境で、さらに治療による副作用まであるのですから当然といえば当然です。転倒は複数の要因によって起こることが殆どです。病気を治療する行為の多くが転倒のリ…
高齢者のかゆみ 加齢変化により皮膚は光沢がなくなり細かくひび割れた状態になります。皮膚のバリア機能が低下しちょっとの刺激を「かゆみ」と認識してしまう場合があります(老人性乾皮症)。他にも様々な原因でかゆみが起こりますが、ポイントは「かゆみの範…
高齢者の高血圧 年をとるとともに血圧は高くなります。また、血圧の変動もしやすくなり、起立性低血圧や食後低血圧などが起こりやすくなります。ただ単に高いから降圧薬で下げることだけを考えていると、ふらつき、転倒・骨折を起こしてしまい、結果として治…
高齢者に睡眠薬は安全か? 入院患者さんの中には不眠を訴える人が比較的多くいます。そんな時に睡眠薬を使用する場合があります。 睡眠薬は睡眠の質を改善させ、睡眠時間を25.2分延長し、夜間の覚醒回数を0.63回減らすことができます。その一方で、認知機能…
レビー小体型認知症について 認知症のひとつである「レビー小体型認知症」の特徴は、認知機能障害と運動障害(パーキンソン症状)の両方がみられることです。特徴は以下の通りです。 ■動揺性のある認知障害 認知機能障害は時間や日によって変動します。全く…
フレイルに震えない 「老年症候群」(No. 24参照)、「サルコペニア」(No. 36参照)とあわせて、今回取り上げる「フレイル」は高齢者の医療に取り組むには避けて通れない概念です。「フレイル」日本語では「虚弱」「老衰」「脆弱」などと表現されます。定義とし…
脆弱性骨折について 脆弱性骨折(特発性骨折ともいいます)は、ごく小さな力が外から加わった時、あるいは明らかな力が加わったわけではないのに、日常生活動作程度のストレスで生じた骨折のことを言います。 脆弱性骨折を起こす原因としては、骨粗鬆症や甲状…
高齢者の認知機能低下について 回復期リハ病棟に入院する高齢の患者さんの多くに、入院の原因となった病気に加えて認知機能の低下があります。元々の病気よりもむしろ、この認知機能低下の方が、リハの成果や入院生活に影響していることも少なくありません。…
クスリのリスク 回復期リハ病棟に入院する患者さんの大半は高齢者で、たくさんの病気を持っていることが多く、病気の数だけ飲んでいる薬も多くなります。この、たくさんの薬を飲んでいる状態を、ポリファーマシー Polypharmacy(多剤併用)と言います。だい…
サルコペニアとは 歳をとると筋肉は減少し、筋力も低下します。この加齢に伴う筋肉量・筋力の減少をサルコペニアsarcopeniaといいます。サルコペニアは加齢によって進行します。そこに、活動の低下、疾患(臓器不全、悪性腫瘍、炎症性疾患)、栄養不足などが加…
老年症候群とは? 「歳をとると3つのことが始まる。まずは記憶力が落ち、残り2つは思い出せない」 ――Sir Norman Wisdom 平成29年の厚労省統計によると、回復期リハ病棟に入院する患者の67%は75歳以上の高齢者だそうです。高齢者はこれまでの病気や怪我、そし…
高齢者のせん妄にはどのように対処すればよいか? せん妄は、入院中の高齢者でよく見られる一過性の意識の混乱した状態です。心臓の機能が低下した状態を心不全と言いますが、同じように、せん妄は脳の機能が低下した状態、脳不全の状態です。もともと心臓に…