ミニレクチャー No. 82 水頭症に対するシャント造設術

水頭症に対するシャント造設術

 

脳は密閉された空間の中で脳脊髄液という液体に浮かんだ状態で存在しています。この脳脊髄液は、日々作られ、同じ量が排泄されることで一定に保たれています。この正常な脳脊髄液の循環が何らかの理由で滞ると、脳が圧迫され「水頭症」を引き起こします。くも膜下出血の後にも水頭症が起こることがあります。 

 

水頭症の症状は、歩行障害、認知症、失禁の3つが特徴です。また頭部CTをとると脳室が拡大しています。、Evans比(両側側脳室前角間最大幅/その部位における頭蓋内内腔幅)が0.3以上を拡大ありと判断します。

 

原因はくも膜下出血の他にも髄膜炎や頭部外傷 のように、何らかの頭蓋内の病気の後に起こるもの(二次性または続発性といいます)と、特定の原因が不明なもの(特発性といいます)があります。

 

治療はシャント造設術という手術が行われます。頭蓋内に溜まって排泄できなくなった脳脊髄液を頭蓋内から外へ流して脳への圧迫をなくす治療です。大きく分けて2種類の方法があります。ひとつは「脳室-腹腔シャント」といって、側脳室と、腹腔内をシャントチューブでつなぎます。もうひとつは、「腰椎-腹腔シャント」といって、腰部の硬膜下腔と腹腔内をシャントチューブでつなぎます。シャントが上手く機能すると水頭症の症状は劇的に改善する場合があります。術後も脳脊髄液を排泄する量を調整する必要があることが多いため、最近は、手術後に専用の装置で設定を変更して排泄量を調整することができる「圧可変バルブ」という装置が用いられます。

 

髄液の排出が少なければ水頭症の症状が出現します。逆に、髄液を排出しすぎると頭痛がしたり、硬膜下血腫を起こしたりシャントチューブの閉塞が起こることがあります。最近のシャントバルブには重力による髄液排出量への影響を軽減するための仕組み(アンチサイフォンバルブといいます)が備わっていますが、急性期病院では臥床して過ごす時間が多いですが、回復期リハ病棟へ移ると、座位・立位で活動する時間が増えるため、たとえアンチサイフォンバルブであっても重力の影響で、髄液の排出が増えることがあります。なので回復期リハ病棟に入院中にもシャントがきちんと機能しているかチェックしつつリハを行う必要があります。回復期リハ病棟入院中の水頭症患者の3割でシャント圧調整が必要になったという報告があります。