No. 107 脊椎術後合併症

脊椎術後合併症

 

1.硬膜外血腫

概  要:硬膜外腔に血液が貯留して脊髄や馬尾・神経根を圧迫し、疼痛や麻痺を生じる

発症時期:術後2日以内が多いが、離床開始後に起こることもある

危険因子:抗血栓薬・抗凝固薬、広範囲の手術、内視鏡手術、高血圧、血液凝固能の低下

観察項目:ドレーンの排液、麻痺、疼痛


2.術後創部感染症

概  要:創内に細菌が増殖した状態

発症時期:インプラントなし:30日以内、インプラントあり:1年以内

危険因子:血糖コントロール不良、透析患者、免疫抑制薬、もともと感染がある、放射線治療後、低栄養、ステロイド、喫煙、肥満、高齢

観察項目:創部の発赤・腫脹・熱感・疼痛、発熱の有無、滲出液の有無・清浄、栄養状態


3.硬膜損傷・髄液漏

概  要:手術操作によって硬膜が破けて脳脊髄液が流出し皮下に貯留する。逆行性に髄膜炎を起こすことがある。安静にして自然治癒を待つが、難治性の場合はスパイナルドレナージを行う。

発症時期:術後

観察項目:低髄圧症状(頭痛、悪心・嘔吐)、髄膜刺激症状(発熱、頭痛、悪心・嘔吐、項部硬直、ケルニッヒ徴候


4.静脈血栓塞栓症

概  要:下肢静脈のうっ滞により血栓が形成される(DVT)。その血栓が剥がれて肺の動脈を詰める(PTE)

発症時期:離床後

危険因子:長期臥床、脱水、全身麻酔の手術、動脈硬化症、下肢麻痺、下肢静脈瘤、悪性腫瘍、喫煙

観察項目:DVT;下肢の変色・腫脹、ホーマンズ徴候(膝関節伸展位で足関節を他動的に背屈させた時に腓腹に痛みが生じる)

PTE;呼吸困難、胸痛、SpO2の低下


5.第5頚椎(C5)麻痺

概  要:頚椎の術後、強い肩痛が生じた後で肩関節の挙上困難が起こることがある。手術によって脊髄の圧迫が解除されることで、新たに神経根の圧迫が生じる場合がある。発症頻度は5%

発症時期:術後5~7日後。予後良好で90%の人は6ヶ月~1年で自然に回復する

危険因子:高齢者、多椎体切除

観察項目:廃用による筋萎縮・ROM制限の有無、疼痛