ミニレクチャー No. 30:人工呼吸器の10箇条

人工呼吸器の10箇条

以下の参考文献から、まったくひねりなしのコピペです。人工呼吸器を取り扱ううえでの原理原則です。

 

1. 「呼吸=肺」と考えない

呼吸がうまくいっていない患者さんでは、必ずしも肺が悪いわけではありません。中枢神経→脊髄→末梢神経→筋肉→胸壁→気道といった、呼吸に関わる全ての要素を考えます。

 

2. SpO2だけで重症かどうか判断しない

酸素飽和度が示しているのは、ガス交換のうちの酸素化だけに過ぎません。SpO2がよくても気管挿管や人工呼吸が必要な場合があります。

 

3. 気管挿管と人工呼吸は分けて考える

気管チューブの役割と、人工呼吸器の役割は異なります。両者を分けて考えることで導入や離脱の基準がわかりやくすなります。

 

4. 人工呼吸ではモードよりも設定にこだわる
人工呼吸器にはたくさんのモードがありますが、あまり根拠があるわけではありません。どのモードも良し悪しがあり、どのモードにするかよりも、安全に使うよう設定にこだわるのが大切です。


5. 人工呼吸器は肺を良くすることはないが、悪くはできることを知る
人工呼吸器はあくまで呼吸が良くなるまでの時間稼ぎです。肺を良くするわけではありません。しかし、人工呼吸器を安全に使わなければ、いくらでも肺を悪くすることはできます。


6. 人工呼吸管理中には、正常な血液ガスを目標にしない
人工呼吸器はあくまでも時間稼ぎですので、血液ガスの数値をよくしても肺がよくなっているわけではありません。逆に、血液ガスを正常にしようと無理な設定にすると肺を悪くします。


7. 人工呼吸器に患者を合わせるのではなく、患者の呼吸に人工呼吸器を合わせる
人工呼吸器は患者さんの呼吸を手助けするものですから、患者さんの呼吸にあわせて設定を調節します。お仕着せの設定にして、鎮静などで無理やりに患者さんを合わせるのではありません。


8. 呼気に注意する
人工呼吸器で設定できるのは吸気だけで、呼気は患者さん任せです。ですから、息を吐き切れているかどうか観察することが大切です。


9. 人工呼吸器は診断にも使う
人工呼吸器は、患者さんの呼吸を手助けする役割のみを考えがちですが、肺の状態を知るツールでもあります。


10.患者の回復をあなどらない
いったん回復しだした患者さんの呼吸状態は急速に良くなります。人工呼吸器が要らなくなっているのを見逃さないよう、毎日評価するのが大事です。

参考文献:
田中竜馬:Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理 人工呼吸設定の根拠を病態から理解し、ケーススタディで実践力をアップ!, 羊土社, 2014.