No. 127 プレゼンテーションスキル

プレゼンテーションスキル

 

No.26でカルテの書き方について触れました。

 

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カルテ記載と共に重要な技術として「プレゼンテーションスキル」があります。つまり人前で発表する技術のことです。医療現場で働いていると、多職種が集まって行うカンファレンスや症例検討会、または学会発表など、プレゼンテーションを行う機会がたくさんあります。学会発表はやや特殊なので、今回はカンファレンスや症例検討会で担当患者のプレゼンテーションする場合のコツについて述べます。

 

プレゼンテーションの元となる情報は基本的にカルテ情報です。なので必要な情報を収集し、カルテをきちんと書くことができることが、まずは下準備として必要です。カルテがしっかり作ることができれば、プレゼンテーションも楽にできます。ただし、カルテをそのまま読み上げても良いプレゼンテーションにはなりません。というのも、書かれた文章を読む場合は読み手は、好きに目線を動かして自分の欲しい情報を拾い上げられますが、話している内容を聞く場合は、話す順番にしか情報は得られません。情報の取捨選択もできません。多くの場合時間も限られています。そんな臨床現場で必要なプレゼンテーションのコツについて、下記の参考文献から一部内容を回復期リハ向けに変更して記載します。

 

その1. Opening statementを入れる

カルテでは必要な情報は自分で好きに探しながら読めるので必要ないですが、プレゼンテーションでは最初にその患者さんの概要が把握できる文章を最初にもってきます。内容は「背景+年齢+性別+病名」を含んだもので、ひと息で言える長さにします。例えば「一人暮らしで軽度認知機能低下はありましたが、日常生活自立していた80歳女性の脳出血片麻痺の患者です」といった具合です。この一文で、聞く側はなんとなくイメージをもって、続きのプレゼンテーションを聞くことができます。

 

その2. 最初にディスカッションのポイントを提示する

Opening statementの次は、細かい評価内容をすぐに話すのではなく、これからのカンファレンスや検討会でディスカッションしたいと自分が考えているポイントを述べます。そうすることで、聞き手もその後のプレゼンテーションをそのポイントを頭において聞くことができます。例えば、上記のOpening statementに続いて「運動麻痺が重度で、目標設定ができずに困っています。評価のアセスメントまででプレゼンを止めますので、目標設定についてご指導ください。」の様に言うのもありです。

 

その3. SとOは関連する情報のみを話す

上記の前振りのあとは、病歴聴取や評価した内容について述べることになりますが、ここでは得られた情報をすべて述べるのではなく、アセスメントに関係のある情報に絞って述べるようにします。この時は「〇〇がある」という情報も大事ですが、「〇〇がない(あるべきものがない)」という情報も重要です。そして得られた情報から、自分が考えるアセスメントを述べ、最後にアセスメントに準じた目標や診療計画を述べて終了です。

 

以上のことからわかるように、これから皆で議論したいこと、助言してほしいこと、伝えたいこと、から逆算してプレゼンテーションを設計することが、短時間で伝わる良いプレゼンテーションを行うコツです。

職種によって話し方(=プレゼンテーションの仕方)には特徴があるそうです。医療従事者は情報を伝えるときに結果から話して追加の情報を述べる傾向があり、介護職は、時系列順にはじめから結果まで話す傾向があるそうです。医療職の中でも細かい違いがあるかもしれません。多職種が集うカンファレンスでは、見ている視点、得ている情報も異なるため、共通の枠組みが必要になるかもしれません。最近はICFの概念を枠組みとして利用して多職種カンファレンスを行なっている所もあります。

 

参考文献:佐藤健太:「型」が身につくカルテの書き方 第1版, 医学書院, 2015.