2018-01-01から1年間の記事一覧

No. 107 脊椎術後合併症

脊椎術後合併症 1.硬膜外血腫 概 要:硬膜外腔に血液が貯留して脊髄や馬尾・神経根を圧迫し、疼痛や麻痺を生じる 発症時期:術後2日以内が多いが、離床開始後に起こることもある 危険因子:抗血栓薬・抗凝固薬、広範囲の手術、内視鏡手術、高血圧、血液凝固…

ミニレクチャー No. 106 心肺機能は鍛えるほど長生きできる?

心肺機能は鍛えるほど長生きできる? Association of Cardiorespiratory Fitness With Long-term Mortality Among Adults Undergoing Exercise Treadmill Testing Kyle Mandsager, MD; Serge Harb, MD; Paul Cremer, MD; Dermot Phelan, MD, PhD; Steven E. …

ミニレクチャー No. 105 比較的徐脈とは?

比較的徐脈とは? 38.3度よりも高い発熱があると、心拍数は1度上がるにつれて8~10回/分増える。これは1800年代にCarl von Liebermeisterによって発見されたのでLiebermeisterの法則という。38.3度以上の発熱があるにもかかわらずこの法則通りの心拍数の上昇…

ミニレクチャー No. 104 下血について

下血について 肛門から血液が排泄されることを「下血」と言います。血液の出所は消化管の「どこか」である場合がほどんどですが、消化管のどの辺りからの出血なのかで、その後の対応が異なってきます。出血源を知ろうと思えば、内視鏡検査で実際に出血してい…

ミニレクチャー No. 103 脳梗塞の場所と麻痺の関係

市川 博雄:症状・経過観察に役立つ 脳卒中の画像のみかた, 医学書院, 2014.より引用

ミニレクチャー No. 102 巻き爪の対処法

巻き爪の対処方法 「巻き爪」、専門用語では「陥入爪」といいます。老若男女誰にでも起こります。原因はさまざまですが、高齢者の場合は十分に足のゆびに体重がかからないことが原因のひとつにあります。本来、足の爪は体重がかかることで平らになる方向に力…

ミニレクチャー No. 101 慢性硬膜下血腫は手術すべき?

慢性硬膜下血腫は手術すべき? 慢性硬膜下血腫は転倒して頭を打つなどの出来事からしばらくして(通常1~2ヶ月後)、頭蓋骨の下にある脳を覆っている硬膜と脳との隙間に血腫がたまる病気です。脳と硬膜をつなぐ静脈が破けることにより、髄液と血液の混ざった貯…

No. 100 「知っている」と思えばそこで進歩は止まる

「知っている」と思えばそこで進歩は止まる 4月の回復期リハ病棟開設に伴って始めたこのレクチャーもついに100回目を迎えました。あまりリハビリテーションらしくないことも含め、現場でその時必要な内容を書くようにしてきました。多くは本や論文の内容を引…

ミニレクチャー No. 99 敗血症について

敗血症について 入院中の患者さんは、肺炎や尿路感染症など様々な感染症を起こすことがあります。感染症が重症な場合には、感染した元の臓器のみならず、全身の臓器に致命的な障害を起こすことがあり、その状態を敗血症と言います。 この時の臓器障害を評価…

ミニレクチャー No. 98 スピーチカニューレについて

スピーチカニューレについて スピーチカニューレとは、スピーチバルブを装着した側孔のあるカニューレのことです。スピーチバルブにはフィルムが入っていて、バルブからは息は吸えますが、吐く息はバルブを通らずに側孔から声帯へと流れるため声が出せます。…

ミニレクチャー No. 97 Critical illness polyneuropathy and myopathyとは?

Critical illness polyneuropathy and myopathyとは? critical illness polyneuropathy and myopathy:CIP/Mとは、日本語にすると重症疾患多発神経障害および筋障害と言い換えれらます。ただニューロパチーやミオパチーは〇〇障害と訳すとややニュアンスが…

ミニレクチャー No. 96 感染対策:インフルエンザ予防接種の重要性

感染対策:インフルエンザ予防接種の重要性 インフルエンザシーズンが近づいてまいりました。毎年入院患者さんに流行して面会制限をする病院が必ずあります。流行を予防するための手段として予防接種がありますが、「インフルエンザの予防接種なんて効かない…

ミニレクチャー No. 95 脳梗塞の種類

脳梗塞の種類 脳梗塞は脳細胞への血流が途絶えたことによって、脳細胞が死んでしまうことで起こります。その原因によっていくつかに分けられます: 心原性脳塞栓症:心臓の中にできた血栓が脳動脈に流れて血管をつまらせたものです。心房細動によるものが最…

ミニレクチャー No. 94:頚椎症性脊髄症とは?

頚椎症性脊髄症とは? 頚椎症とは加齢によって頚椎が変形することが原因で症状が出る病気のことです。その結果として、頚髄が圧迫を受けている場合を「頚椎症性脊髄症」といいます。一方、神経根が通る椎間孔が狭くなって症状が出た場合を「頚椎症性神経根症…

ミニレクチャー No. 93 最適な回復期リハの在院期間は?

最適な回復期リハの在院期間は? 回復期リハ病棟は、入院の原因となった病気に応じて在院期間の上限が決められています(No.4参照)。しかし、これはあくまでも「上限」であって、実際の在院期間は個々の患者さんで異なり、機能を最大限まで回復し、退院後の生…

ミニレクチャー No. 92 感染対策:風邪を予防するには?

感染対策:風邪を予防するには? 最近寒くなってきて、ちょっとした風邪が流行ってます。仕事を休むほどではないけど、鼻水や咳が出てなんとなくだるい、という人いませんか?風邪は正しくは上気道の感染症で、ほとんどがウィルス感染によるものです。ですの…

No. 91 脊髄損傷 その4:再び歩けるようになる?

脊髄損傷 その4:再び歩けるようになる? 脊髄損傷の患者さんの多くは、下半身の麻痺が残り車椅子の生活となります。現代医学では損傷した脊髄を修復する方法はありません。受傷後半年も経てば自然治癒による改善もなくなり、その段階で歩けない人は、その後…

ミニレクチャー No. 90 高齢者の糖尿病は積極的に治療しないほうがよい?

高齢者の糖尿病は積極的に治療しないほうがよい? 糖尿病は、尿に糖が含まれることからついた名前ですが、本当のところの問題は、血液の中に過剰な糖が存在することにあります。糖が多量に血液の中にあると血管の壁を内側から傷つけ、様々な病気の原因になり…

ミニレクチャー No. 89 大腿骨頚部骨折の手術は早めに

大腿骨頚部骨折の手術は早めに 高齢者では、転倒して大腿骨頚部骨折をおこすひとがたくさんいます。回復期リハ病棟に入院している患者さんでも、あってほしくはないですが、転倒してしまい不幸にも大腿骨頚部を骨折してしまう場合があります。こんな時は、手…

ミニレクチャー No. 88 入院中の高齢者の転倒予防

入院中の高齢者の転倒予防 入院中の高齢者は転倒のリスクが高いです。疾患がある上に、慣れない環境で、さらに治療による副作用まであるのですから当然といえば当然です。転倒は複数の要因によって起こることが殆どです。病気を治療する行為の多くが転倒のリ…

ミニレクチャー No. 87 高次脳機能障害 その5:遂行機能障害とは?

高次脳機能障害 その5:遂行機能障害とは? 「遂行機能」は今まで出てきた「注意」や「記憶」と比べると普段使わない言葉ですが、何となく意味はわかるのではないでしょうか。普段の生活で私たちは、何をするにしても目的を持って行動しています。その目的を…

ミニレクチャー No. 86 高齢者のかゆみ

高齢者のかゆみ 加齢変化により皮膚は光沢がなくなり細かくひび割れた状態になります。皮膚のバリア機能が低下しちょっとの刺激を「かゆみ」と認識してしまう場合があります(老人性乾皮症)。他にも様々な原因でかゆみが起こりますが、ポイントは「かゆみの範…

ミニレクチャー No. 85 運動療法 その1:筋力増強訓練

運動療法 その1:筋力増強訓練 リハビリテーションの中心となる治療は何と言っても運動療法です。その中でも特に筋力増強訓練、いわゆる「筋トレ」はどのような疾患の患者さんにとっても必要です。筋トレと聞くと、スポーツジムの様なところでダンベルやバー…

ミニレクチャー No. 84 感染対策: 疥癬について

感染対策: 疥癬について 疥癬(かいせん)とはヒトヒゼンダニが皮膚の角質層に寄生する感染症です。激しいかゆみと体幹・四肢の丘疹・掻爬痕が特徴です。疥癬には「通常疥癬」と「角化型疥癬」の2つがあります。寄生するダニは同じものですが、寄生している数…

ミニレクチャー No. 83 高次脳機能障害 その4:記憶障害とは?

高次脳機能障害 その4:記憶障害とは? 記憶障害は高次脳機能障害の中でも比較的メジャーな存在で、小説や映画の題材にもなっています。記憶障害を細かく分類すると、逆向健忘(脳の障害より過去のことを思い出せない)、外傷後健忘(脳の障害後の記憶を思い出…

ミニレクチャー No. 82 水頭症に対するシャント造設術

水頭症に対するシャント造設術 脳は密閉された空間の中で脳脊髄液という液体に浮かんだ状態で存在しています。この脳脊髄液は、日々作られ、同じ量が排泄されることで一定に保たれています。この正常な脳脊髄液の循環が何らかの理由で滞ると、脳が圧迫され「…

ミニレクチャー No. 81 脊髄損傷 その3:ケアのポイント

脊髄損傷 その3:ケアのポイント 脊髄損傷では運動麻痺が一番目に見える症状ですが、その他にも様々な症状が出現します。脊髄損傷の患者さんで起こりうる、運動麻痺以外の症状とその対応方法についてまとめます。 1. 循環器障害 延髄から脊髄にある血管運動…

ミニレクチャー No. 80 高齢者の高血圧

高齢者の高血圧 年をとるとともに血圧は高くなります。また、血圧の変動もしやすくなり、起立性低血圧や食後低血圧などが起こりやすくなります。ただ単に高いから降圧薬で下げることだけを考えていると、ふらつき、転倒・骨折を起こしてしまい、結果として治…

ミニレクチャー No. 79 高次脳機能障 その3:注意障害とは?

高次脳機能障 その3:注意障害とは? 高次脳機能障害のなかでよくみられる症状として「注意障害」があります。普段「注意力」といえば、目の前のことに集中したり、または大切なことを見逃さず、聞き逃さずに情報を収集したりする能力の事をさして言うと思い…

ミニレクチャー No. 78 脊髄損傷 その2:排尿管理

脊髄損傷 その2:排尿管理 脊髄損傷によって膀胱と尿道括約筋が麻痺すると、尿意・排尿感がなくなり、頻尿、尿失禁あるいは尿閉となります。尿が出ないために行われる安易なカテーテル留置がもとで治らない膀胱炎を起こし、難治性尿路感染症になり、ついには…