ミニレクチャー No. 79 高次脳機能障 その3:注意障害とは?

高次脳機能障 その3:注意障害とは?

 

高次脳機能障害のなかでよくみられる症状として「注意障害」があります。普段「注意力」といえば、目の前のことに集中したり、または大切なことを見逃さず、聞き逃さずに情報を収集したりする能力の事をさして言うと思いますが、「注意障害」でいう注意も概ね同じものと捉えてOKです。

注意力は、すべての認知機能の基盤になっています。注意障害が重度な場合は、ほかの高次脳機能にも影響を与えます。また、注意は視覚や聴覚そのものの問題ではありません。外部から入ってきた刺激・情報のうち、どれを選択して、その他はノイズとして無視するのかという、刺激に対する重み付けを行う前頭葉の機能が障害されることで注意障害が起こります。

注意には細かく分けると「選択」「持続」「分配」「転換」に分けられます。注意の分配とは、複数の事柄に気を配ることで、注意の転換とは、集中する対象を次から次へと意識的に切り替えることです。これらの複雑な注意力は、比較的多くの患者さんで障害されていますが、病棟での日常生活の中では気づかない場合もあり、専用の検査をして初めて明らかになることがあります。

以下は注意障害を日常生活の観察のなかで把握するための評価スケールの項目です。それぞれに「全く認めない=0点、時として認められる=1点、時々認められる=2点、ほとんどいつも認められる=3点、絶えず認められる=4点」で採点します。点数をつけるかどうかは別にして、どのようなことに「注意」して観察すればよいかが分かるのではないでしょうか:

  1. 眠そうで、活力に欠けて見える
  2. すぐに疲れる
  3. 動作がのろい
  4. 言葉での反応が鈍い
  5. 頭脳的ないしは心理的な作業(たとえば計算など)が遅い
  6. 言われないと何事も続けられない
  7. 長時間(約15秒以上)宙をじっと見つめている
  8. ひとつのことに注意を集中するのが困難である
  9. すぐに注意散漫になる
  10. 一度に2つ以上のことに注意を向けることができない
  11. 注意をうまく向けられないために、間違いをおかす
  12. なにかする際に細かいことが抜けてしまう(誤る)
  13. 落ち着きがない
  14. 一つのことに長く(5分以上)集中して取り組めない

他には、Trail Making Testという検査や、標準注意検査 Clinical Assessment for Attention: CATという検査なども行われます。

参考

先崎 章:高次脳機能障害 精神医学・心理学的対応ポケットマニュアル, 医歯薬出版株式会社, 2014.