ミニレクチャー No. 99 敗血症について

敗血症について

 


入院中の患者さんは、肺炎や尿路感染症など様々な感染症を起こすことがあります。感染症が重症な場合には、感染した元の臓器のみならず、全身の臓器に致命的な障害を起こすことがあり、その状態を敗血症と言います。

 


この時の臓器障害を評価する方法として、SOFA (sequential organ failure assessment)という評価方法があります。血液検査などのある項目に点数を付けて評価するのですが、さらにベッドサイドですぐに行える簡易版のqSOFA(quick SOFA)というのもあって、これは以下のたった3つの項目からなります:

 


1. 収縮期血圧 100 mmHg以下

2. 呼吸数 22 /min以上

3. GCS (Glasgow Coma Scale)15未満の意識低下

 


各1点、3点満点で計算します。そしてqSOFAが2点以上は1点以下と比べ、院内死亡率が3倍から14倍になると言われています。

 


ちなみにGlasgow Coma Scaleは、JCSの様な意識障害の評価法です。15点満点で点数が低いほど重症です。開眼4点、音声言語反応5点、最良運動反応6点の3項目で評価します。qSOFAのGCS15点未満というのはつまり「満点ではない」ということなので、すこしでも意識障害があれば、qSOFAのGCSは1点になります。

 


qSOFAはICU以外の入院患者6万6522人の感染症疑い患者のうち、死亡した1886人(3%)のデータから多変量ロジスティック回帰分析を用いて導かれました。わずか3つのバイタルサイン(血圧、呼吸数、意識レベル)が多くの様々な検査データよりも役に立つのです。

 


ただしqSOFAは敗血症の特異度は高いのですが感度が低いので、 敗血症の高リスクの拾い出しには使えますが、1点以下だからと言って、敗血症を否定できるわけではありませんので注意が必要です。

 


感染症がありそうな患者さんがqSOFA2点以上だったら、とにかく体に必要な水分を行き届かせて、感染症のコントロールを行います。早期に、培養などの検体を採取し、1時間以内に適切な抗菌薬を開始します。抗菌薬の開始が遅れると死亡率が上昇します。

 


そして十分な補液(細胞外液30ml/kg)を行なっても、平均血圧[=(収縮期血圧拡張期血圧)/3+拡張期血圧]が65mmHg以上にならない場合は、敗血症性ショックの状態であり、この時は死亡率は40%に達します。輸液だけでなく昇圧薬としてノルアドレナリンを使います。また、細胞外液として点滴するのは、生理食塩水よりも乳酸リンゲル液の方が腎障害が起こりにくいです。

 


参考文献 荒 隆紀:京都ERポケットブック、医学書院、2018