No. 135 肘関節の脱臼骨折のリハビリテーション

肘関節の脱臼骨折のリハビリテーション

 

肘関節脱臼骨折の特徴

  • 肘関節の脱臼は肘の外傷の11~28%を占める
  • それは10歳未満の子供の最も一般的な脱臼であり、成人では肩に次いで二番目に多い
  • 年間の発症率は6/10万人
  • 肘関節脱臼の90%が後方もしくは後外側への脱臼
  • 完全進展が出来なくなること、が最も多い合併症で、拘縮が60%の症例にみとめられる
  • 3週間以上の固定は、持続的な硬直と関節拘縮を引き起こす
  • これらの合併症は早期からの肘関節の自動運動を含めたリハビリテーションの必要性を示している

 

肘関節の脱臼に伴う骨折がよく見られるのは、橈骨頭、尺骨の鉤状突起、および肘頭です。いわゆる「terrible triad」と呼ばれる脱臼骨折は、鉤状突起、橈骨頭、および外側側副靭帯損傷を伴ったものです。肘関節の脱臼骨折は受傷時に加わる力の方向によっても分けられることがあります:軸方向、外反後外方回旋、内反後内方回旋です。肘関節の脱臼骨折の大半は外科的治療がされます。術後の方針は、どのような骨構造が修復されるかによって決まってきます。靭帯の再建もされていれば術後プロトコルは靭帯への負荷も考慮されます。軸方向の脱臼骨折の場合は靭帯は無傷の場合が多いですが、肘頭は橈骨頭の脱臼により骨折しています。外反後外方回旋による外傷の場合は、外側側副靭帯、橈骨頭、鉤状突起が傷害され、そして特に内側側副靱帯が傷害されます。内反後内方回旋による外傷では、外側側副靭帯と鉤状突起が傷害されます。

 

肘関節脱臼骨折のリハビリテーションプロトコル

 

1. 肘頭骨折と橈骨頭の脱臼を伴う軸方向の力による外傷

PHASE I (0–1週) ・・・・1週間のスプリント固定

PHASE II (1–6週)・・・・2週目に抜糸スプリントの除去
屈曲、伸展、回内、回外のROMex.を開始する
術者の指示で安定性を得るために継手付きの肘装具を用いることもある
高齢者や重度に粉砕した骨折の場合、保護されていない状態での全可動域のROMは、術者の指示によって最大で4週間遅
らせることもある

PHASE III (6–8週以降)・・抵抗運動を開始

 

2. 外側側副靭帯損傷、橈骨頭と鉤状突起の骨折を伴う外反後外方回旋による外傷

PHASE I (0–1週)・・・・・靭帯の修復に応じたスプリント固定

PHASE II (1–4週)・・・・・1週後にスプリント除去、2週後に抜糸
継手付き肘装具装着下で伸展マイナス30度の制限を4週間、マイルドな自動ROMex.
肘の他動的ROMex.は禁止
内外反ストレスを避けるために肘関節屈曲90度での前腕の回内外運動を行う

PHASE III (6–8週以降)・・・骨癒合が得られていることが明らかな場合は抵抗運動を開始する

3. 外側側副靭帯損傷と鉤状突起骨折を伴う内反後内方回旋による外傷

PHASE I (0–1週)・・・・・術後スプリント固定

PHASE II (1-6週)・・・・・2週後に抜糸、スプリント除去し継手付き装具を装着マイルドな自動ROMex.

運動中の特に体に近づける動作時の内反ストレスを避ける
鉤状突起
の固定性によって伸展角度が決まってくる

鉤状突起の骨癒合を考慮し、4週間は最終伸展マイナス30度に制限する

PHASE III (6–8週以降)・・・骨癒合が得られていることが明らかな場合は抵抗運動を開始する

 

参考文献

Charles E. Giangarra, Robert C. Manske, S. Brent Brotzman : Clinical Orthopaedic Rehabilitation: A Team Approach, Fourth Edition, ELSEVIER, 2018.