No. 122 原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症とは、副腎からアルドステロンというホルモンが勝手に過剰に作られ、その作用で高血圧などの症状が生じる疾患です。高血圧の約5~10%の原因になっています。また治療してもなかなか治らない高血圧(治療抵抗性の高血圧)の20%にはよくよく調べると原発性アルドステロン症が見つかります。診断されれば治癒可能な高血圧なので、診断がきわめて重要です。

特徴は、比較的若い時から始まる中等症以上の高血圧で、治療抵抗性であり、低カリウム血症を伴います。そして、副腎に腫瘍がみつかることがあります。さらに40歳以下の脳血管障害の既往があることがあります。

 

診断は、高血圧の人、特に上記の特徴のある人は血漿アルドステロン濃度、血漿レニン活性比を測定しスクリーニングを行うことが望ましいです。低カリウム血症は有名な所見ですが頻度は約25%であり、低カリウム血症がないからといって否定はできません。スクリーニングで引っかかった患者さんは、専門医を受診し確定診断のための検査を受けます。原因の大部分は片側性のアルドステロン産生腺腫と両側性の特発性副腎過形成ですので、副腎CT検査を施行し副腎の腫瘍や過形成の有無を検査します。

 

確定診断後の薬物治療は、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン、エプレレノン)を用います。低カリウム血症に対してはカリウム製剤補充で対応します。スピロノラクトン(25~50mg/日)を用いると、降圧薬の使用が0.5剤(平均2.3→1.8)、収縮期血圧-15mmHg(平均161→146)、拡張期血圧-8mmHg(平均91→83)の減少を認め、48%の症例が血圧140/90mmHg未満にコントロールできたとの報告があります。

 

また片側の副腎にできた腫瘍がアルドステロンを過剰に産生している場合は手術でその腫瘍を摘出することも可能です。その場合は選択的副腎静脈サンプリングを施行してアルドステロン過剰産生部位が片側性か両側性を決定し、片側の副腎病変によるアルドステロン過剰産生と診断されれば、腹腔鏡下内視鏡的副腎摘出術が行われます。

 

なお低カリウム血症になると、筋力低下が引き起こされます。症例報告レベルでは、低カリウム血症が誘因となって人工呼吸器が必要なほどの四肢麻痺を引き起こし、カリウム補正を行ったところ麻痺が回復した、という報告があります。

 

Medha M, et al : An Unusual Presentation of Hypokalemia, J Anesth Clan Res 5:389, 2014.

 

はじめギラン・バレー症候群と思われていた弛緩性麻痺患者さんが、低カリウム血症があり、カリウム値の補正後に麻痺が改善しはじめた、というものです。他にも似たような症例が2、3例報告されているそうです。

 

回復期リハ病棟には、本当に色々な疾患をもった患者さんが入院してきます。