高齢者の不眠に対してベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使用することの危険性については「No.60 高齢者に睡眠薬は安全か?」で述べました。その時、トラゾドンという薬についても少し触れましたが、今回はこのトラゾドンについて掘り下げます。
トラゾドンはそもそも 抗うつ薬 です。1980年代にイタリアで開発された古い薬で、抗うつ薬としては新しいよりよく効く薬が登場したことで、第一線から退いています。ところがトラゾドンには軽い鎮静作用、つまり眠くなる作用があるため、睡眠障害に対して用いられるようになりました。ただし、欧米では睡眠調整剤として一般的に使用されていますが、日本では保険診療の適応病名に不眠症は含まれないため、用いる時は適応外使用になります。
認知症のある人の不眠症に対するトラゾドンの効果を検証した研究では、50mgを内服することで、プラセボ(偽薬)よりも有効であり、トラゾドン1日50mgを2週間投与することにより、夜間の総睡眠時間を約40分延長し、しかも安全であったと報告されています。
実際に用いる場合には安全を考慮して、1日25mgで開始して、効果が不十分な場合に50mgまで増量する、という使い方をします。副作用としては、持続性勃起障害、過鎮静、躁転、かえって不眠になるなどがみられることがあり、また、1割程度の人には筋力低下がみられたとの報告もあり、経過観察は大切です。
できればトラゾドンも他の睡眠薬も使用せずに眠れるのが一番です。以下は睡眠障害の対応と治療ガイドラインに載っている12の指針です。
睡眠障害対処12の指針:
[rakuten:book:15870806:detail]
参考
小田陽彦:科学的認知症診療5Lessons, Signe, 2018.
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