No. 121 誤嚥性肺炎のABCDEアプローチ

誤嚥性肺炎のABCDEアプローチ

「治療」という医学雑誌の最新号に「終末期の肺炎」という特集記事がありました。「終末期」というと、がんをイメージする人が多いと思います。しかし最近は、がんでない疾患(非がん疾患)の終末期・緩和ケアが注目されつつあります。少し前から心不全の終末期・緩和ケアについて注目が集まり様々な取り組みが行われています。そして最新の話題が肺炎の終末期ケアです。

 

高齢者の肺炎の多くを占める誤嚥性肺炎については、治療はただ単に抗菌薬を投与すれば良いというわけではなく、さまざまな介入が必要です。この特集でこれらをABCDEアプローチとして紹介しています。

 

A:Acute problem・・・急性期治療(抗菌薬投与など)

B:Best Position/ Best meal foam・・・適切な食事姿勢と食事形態

C:Care of oral・・・口腔ケア

D:Drug, Disorder of neuro, Dementia/Delirium・・・嚥下に影響する薬の調整、神経疾患の治療、認知症/せん妄対策

E:Energy, Exercise, Ethical・・・栄養、運動、倫理的配慮

 

似た様なことはNo.17でも書きました。

 

uekent.hatenablog.com

 

回復期リハには誤嚥性肺炎後の廃用症候群の患者さんが入院してきます。または脳卒中後で嚥下障害があり誤嚥性肺炎を起こす人もいます。回復期に入院しているからには、上記のABCDEのアプローチをしっかりと行い、嚥下機能の改善、誤嚥性肺炎の予防につとめ、再び安全に食べられるようになることを目指すことが多いです。実際、経鼻胃管や胃瘻、中心静脈での栄養投与だった人が口から食べることができる様になって退院する人もいますが、なかには「終末期の肺炎」の状態になっている人もいるかもしれません。

 

そのような状態の患者さんには積極的な治療が、むしろ有害になる可能性があります。抗菌薬の投与ですら、過剰な輸液負荷による心臓への負担となったり、クロストリジウム感染症を起こして全身状態をさらに悪化させたりするかもしれません。過剰な栄養投与も負担となることがありますし、運動療法も然り、です。

 

ただ、こんな状態でリハビリテーションなんて出来ないと考える方もいるかもしれませんが、そうではないと思います。リハビリテーション運動療法ではないからです。No.1でも述べましたがリハビリテーションは、「尊厳ある生活ができるようにする」ことです。患者さん本人にとって何が幸せなのか配慮しつつ、すべきことを個別に検討する必要があります。そこには本人の(難しければ家族の)病態に対する理解が必要であり、そのためには医療者との情報の共有が必要です。ただ問題は、どこからが「終末期」なのかを判断する基準があるわけではない、ということです。最も知りたいことが、わかっていません。

 

参考:治療 Vol.100 No.11 特集 終末期の肺炎, 2018, 南山堂.