ミニレクチャー No. 17 誤嚥性肺炎を予防するには?

誤嚥性肺炎を予防するには?

 

咽頭(のどの奥)から誤って気道にモノが入ることを「誤嚥」といいます。咽頭から誤って気道にモノが入り、そのモノに含まれていた細菌やその他の刺激物によって引き起こされる肺炎が「誤嚥性肺炎」です。実は健康な人も誤嚥します。高齢者では毎日のように誤嚥している可能性があります。でも誤嚥が必ずしも肺炎を引き起こすわけではありません。多くの人は肺炎を起こしません。

 

誤嚥性肺炎を引き起こす要因はふたつに分けられます。ひとつは、本人の抵抗力です。抵抗力は痰を喀出する能力と、免疫力からなります。異物や細菌が気道に侵入した際に喀出する力が低下すれば肺炎になる可能性は高くなります。免疫力が低下していれば、普通ならば病気を引き起こさないような細菌でも感染症を引き起こすことがあります。もうひとつは、誤嚥物の侵襲力です。肺に入ってきた細菌が感染力の強いやつであったり、強い酸性の物質(嘔吐した胃液など)であったり、誤嚥物の量が多かったりすれば肺炎になる可能性が高まります。

 

したがって、誤嚥性肺炎を予防するには、上記の要因を改善すればよいわけです。ポイントは以下の7つです:

 

・口腔ケア・・・口腔内を衛生的に保つことは誤嚥物の細菌量を減らします

リハビリテーション・・・嚥下(飲み込み)に関わる筋力や喀出力を高めます、また日中離床し活動することでも誤嚥は減少します

・栄養管理・・・低栄養状態になると体力が低下し、嚥下する力や喀出力が低下します

・食形態の工夫・・・飲み込み易い工夫をすることで誤嚥の頻度を減らします

・ポジショニングの工夫・・・飲み込みやすい姿勢をつくります

・薬の工夫・・・咳反射を誘発する薬は誤嚥を防ぐ助けになります。一方で誤嚥しやすくなる薬もあるので不要なものは減らします

・正しい食事介助・・・ひとくち量やタイミングなど、介助によっても嚥下のしやすさは変わります

 

それぞれの項目の詳しい内容については、参考文献の本などで勉強してください。ちなみに、経鼻経管栄養や胃瘻は誤嚥性肺炎を予防しません。また「絶食」も誤嚥性肺炎を予防しません。むしろ絶食にすると、唾液の分泌が減り、口の中の細菌が繁殖するため誤嚥性肺炎の危険性は高まります。もしも「食べたら誤嚥性肺炎が発生する」と感じているならば、上記のポイントを踏まえたケアが不足している可能性があります。

 

参考文献:

前田 圭介:誤嚥性肺炎の予防とケア-7つの多面的アプローチを始めよう. 医学書院. 2017