ミニレクチャー No. 29 嚥下障害の評価はどうするか?

嚥下障害の評価はどうするか?

 

食事を安全に食べるためには、さまざまな機能が必要です。まず、目の前にあるものが食べ物であると認知でき(認知期)、箸やスプーンで、もしくは介助で、口の中まで運び(準備期)、飲み込める状態になるまで咀嚼し(口腔期)、誤嚥せずに飲み込み(咽頭期)、食道から胃へと送り込まれる(食道期)、という過程がすべて、タイミングよく行われる必要があります。そのどこかに問題があれば、摂食・嚥下障害ありと診断されます。

 

嚥下障害の診断・評価には様々ありますが、まずは食事の時の状況や誤嚥の兆候の有無など、実際の現場での状態の確認が重要です。嚥下困難感、残留感、食欲低下、食事時間の延長、食事による疲労、口腔内の汚れなどの有無を観察します。また誤嚥の兆候については、ムセの有無や、声の変化などがないか確認します。これらのうち一つでも認めたら嚥下障害を疑います。

 

次に簡単に出来るスクリーニングテストを行います。反復唾液嚥下テスト(RSST)と改訂水飲みテスト(MWST)が有名です。RSSTでは、30秒間に空嚥下(食べ物なしでの嚥下)が最大何回できるかをみるもので、2回以下なら嚥下障害の可能性があります。MWSTは3mlの水を実際に嚥下させて、誤嚥の兆候の有無を評価します。

 

スクリーニングで、さらに詳細な検査が必要となった場合は、ビデオ嚥下内視鏡(VE : Videoendoscopic examination of swallowing)や、嚥下造影検査(VF : Videofluorograhic examination of swallowing)を行います。VEは鼻孔から細い内視鏡を挿入して摂食・嚥下中の咽頭喉頭を直接観察する検査です。実際の食品を用いて検査して、唾液や食塊の残留や、声門の運動、誤嚥の有無を評価します。ただ、VEでは嚥下の瞬間自体は観察できないため、誤嚥や侵入の厳密な検索にはVFを行います。VFは造影剤(バリウム)をまぜた食品を食べているところをレントゲンのビデオで撮影する検査です。ごく稀にバリウムによるアレルギーや、もしも大量に誤嚥してしまった場合の肺臓炎のリスクがあり、また、バリウムを混ぜることで普段食べる食品とは性質が変わってしまうという欠点がありますが、観察できる範囲は広く、嚥下機能を総合的に把握する最も有用な評価法とされています。

 

これらの観察、スクリーニング、検査に基づいて、摂食・嚥下開始の判断や、食形態や摂取方法、摂食・嚥下リハの内容、義歯や口腔内装置の適応などの対策を決定します。

ご飯を食べるためには、さまざまな能力が必要であるために、関わるスタッフもさまざま職種が必要です。

 

参考文献:

高橋 博逹:特集 高齢者の摂食・嚥下障害2 摂食・嚥下障害の診断・治療. Geriat. Med. 45(10):1271-1276, 2007