No. 152 薬剤による認知機能障害

薬剤による認知機能障害 加齢とともに複数の疾患を患い多数の薬を飲むことになり、さらに薬物代謝能力が低下することで、薬の作用が増強されやすくなり、様々な影響があらわれます。このような状態を「薬剤起因性老年症候群」といい、ふらつき、転倒、食欲低…

No. 151 口腔咽頭の加齢変化とその対応

口腔咽頭の加齢変化とその対応 加齢に伴う口腔咽頭の変化として代表的なものに喉頭の下垂があります。喉頭の下垂によって舌骨も下垂し、その結果、舌根も下方へと引き下げられます。この変化は男性においてより顕著で、舌骨上筋群が喉頭の重みを支えることが…

No. 150 回復期リハビリテーション病棟協会 第33回研究大会 in 舞浜・千葉 まとめ

2019年2月21日と22日に開催された回復期リハビリテーション病棟協会 第33回研究大会へ参加しました。ディズニーリゾートのホテルや映画館、近隣の総合体育館を利用した豪華な学会でした。頭にネズミの耳のついた人々に混じってスーツ姿の人々がいるという何…

医療面接の注意点

医療面接の注意点 回復期リハ病棟では患者さんやその家族と話し合いの場を持つことが多々あります。そんな時に普段スタッフ同士でミーティングする様な話し方をしては、患者さんや家族には理解できません。医療従事者の常識は世間の非常識です。そして、医療…

No. 148 大腿骨近位部骨折の非手術例

大腿骨近位部骨折の非手術例 No.75で大腿骨近位部骨折を受傷した人では死亡率があがるという話をしました。 uekent.hatenablog.com またNo.89で大腿骨近位部骨折の手術は早期に行った方が成績が良いという話をしました。 uekent.hatenablog.com 今回は大腿骨…

No. 147 失語症

失語症 失語症は脳の損傷によっておこる後天性のコミュニケーション障害のことで、ことばを書くことや話すこと、読んで、聞いて理解することができなくなります。原因疾患としては脳梗塞が最多で、他の原因には、脳出血や脳腫瘍、中枢神経系感染症などがあり…

No. 146 脳卒中後の復職について

脳卒中後の復職について 就労中の人が脳卒中を発症した場合、復職も回復期リハでの重要な目標のひとつになります。脳卒中が比較的軽症だと日常生活動作は早期に自立し、FIMが満点になることは容易かもしれません。しかし仕事に復帰するとなると、さらに複雑…

No. 145 鼻出血

鼻出血 60%の人が一生のうちに鼻出血を経験するとされており、そのうちの約6%が医療機関での治療を必要とするそうです。 鼻出血の80-90%は鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位(図1)からの出血です。 その場合正しい圧迫を行えば止血することができます。鼻出血の…

No. 144 ボトックスについて

ボトックスについて 脳卒中後の片麻痺では、筋の緊張が亢進する「痙縮」とよばれる症状を起こすことがあります。上肢では関節を屈曲する筋の痙縮が強くなり腕が曲がったままになり、使えない、痛みがある、という状況になりやすく、下肢では関節が伸びる方向…

インフルエンザ予防は誤解だらけ

インフルエンザ予防は誤解だらけ 最大最強の方法はもちろん…… 岩田健太郎先生の記事です。前回のミニレクチャーの補足にどうぞ。 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20181031-OYTET50006/

No. 143 インフルエンザ治療薬の予防投与について

インフルエンザ治療薬の予防投与について インフルエンザ流行シーズンにはいりました。抗ウィルス薬の予防投与に関するCDC(Centers for Disease Control and Prevention)の推奨を要約したものを以下に掲載します。 そもそも予防投与よりも、年1回のインフル…

No. 142 高齢者の食欲不振

高齢者の食欲不振 食欲不振に対するアプローチの流れ 高齢者でのある程度の食欲低下は生理的な反応でもあります。食欲を引き起こす消化管ホルモンの分泌は低下し消化管運動は低下します。高齢者の摂取エネルギーは30代成人の1/3程度であったとの報告もありま…

No. 141 変形性膝関節症

変形性膝関節症 変形性関節症の診断基準には明確なものがありません。というのは、症状と画像所見が必ずしも一致しないことがあり、レントゲン上はわずかな変形なのに症状がひどかったり、逆にレントゲンでは重度の変形をみとめるにもかかわらず症状が軽かっ…

No. 140 脳梗塞のEarly CT signについて

脳梗塞のEarly CT signについて 脳梗塞は再発することがあります。発症1年目で5-10%の人が再発するとされており、回復期リハ病棟入院中にも再発する可能性があります。脳梗塞は早期発見が重要です。というのは、近年脳梗塞の治療に劇的な変化が起こっている…

No. 139 鎖骨骨折のリハビリテーション

鎖骨骨折のリハビリテーション 鎖骨骨折は全骨折の10~15%を占める比較的多い骨折ですが、回復期リハ病棟入院適応疾患ではないため、鎖骨骨折のみで回復期病棟へ入院してくることはありません。多くは他の骨折や外傷を伴う多発外傷のなかのひとつとして治療…

No. 138 運動療法

No. 138 運動療法 筋線維の特徴 タイプI線維は「遅筋」とも呼ばれ非常に疲労しにくい濃い色をした線維(いわゆる「赤身の肉」であり、この色は血管が豊富であることによります)であり、PAS染色ではミオシンATPアーゼが明るく染まります。タイプII線維は「白身…

No. 137 生涯学習のススメ

生涯学習のススメ 医学情報は日々どんどん増えています。医学情報の量が倍になるのにかかる時間は、1950年には50年だったものが、1980年には7年、来年の2020年には73日になると予想されています。全ての医学情報を覚えることは到底無理ですし、新しい情報を…

No. 136 栄養療法 ー入院高齢者の低栄養についてー

栄養療法 ー入院高齢者の低栄養についてー はじめに “hospital malnutrition”という言葉があることからもわかるように、入院患者の栄養不良の発症率は3~5割と言われており、特に回復期リハ病棟では低栄養の発症率が高いという報告もあります。そもそも、な…

No. 135 肘関節の脱臼骨折のリハビリテーション

肘関節の脱臼骨折のリハビリテーション 肘関節脱臼骨折の特徴 肘関節の脱臼は肘の外傷の11~28%を占める それは10歳未満の子供の最も一般的な脱臼であり、成人では肩に次いで二番目に多い 年間の発症率は6/10万人 肘関節脱臼の90%が後方もしくは後外側への脱…

No. 134 薬の副作用のみかた

薬の副作用のみかた uekent.hatenablog.com No. 41でも取り上げましたが、どんな薬でも、意図していなかった好ましくない「できごと」(=事象)が起こる可能性があります。そのようなできごとを「有害事象」といいます。有害事象には、飲んだ薬が原因ではない…

No. 133 膀胱留置カテーテル抜去について

膀胱留置カテーテル抜去について No.16にも書いた膀胱留置カテーテルについてのより詳しいまとめです。 uekent.hatenablog.com I. 留置カテーテルの抜去に向けた取り組みの先駆的研究 上田 朋宏:老人総合病院における入院患者の排尿管理について. 泌尿紀要3…

No. 132 めまい

めまい 「めまい」を訴える患者さんは少なくありません。この時大切なのは、「めまい」ということばが具体的にどの様な症状なのかを聞くことです。視界がぐるぐると回っている「回転性めまい」の場合や、起立性低血圧などによる意識消失の一歩手前「前失神」…

No. 131 糖尿病性足病変

糖尿病性足病変 褥瘡に似て非なるものとして糖尿病患者に起こる足の潰瘍があります。末梢神経障害、末梢血管障害、感染症のいずれか、もしくはこれらの組み合わせによって起こります。 末梢神経障害が主な原因による皮膚潰瘍は、おもに関節の突出部に生じま…

No. 130 高齢者の脱水

高齢者の脱水 体の中の総水分量は年齢とともに減少します。細胞外液(≒血管の中を流れている水分)の量は高齢者でもそれほど減少しませんが細胞内液が減少します。これは、年齢とともに水分を多く貯蔵できる筋肉の細胞が減少し、水分を維持しにくい脂肪細胞が…

No. 129 骨盤骨折

骨盤骨折 骨盤は脊柱の根元にある強固な輪を形成する骨です。骨盤の骨折はまれで、成人の骨折のうちの3%を占めます。多くの原因は外傷であり、自動車との衝突などの高エネルギー外傷です。骨盤の近くには重要な血管や臓器が存在するため、骨盤骨折では多量の…

No. 128 点滴をとめるコツ

点滴をとめるコツ 回復期リハ病棟に入院中の患者さんでも点滴が必要になることがしばしばあります。全身状態が許せば点滴したままでもリハは可能な限り行わなければいけません。この時、点滴刺入部に負担がかからないように配慮し、「引っかかって点滴が抜け…

No. 127 プレゼンテーションスキル

プレゼンテーションスキル No.26でカルテの書き方について触れました。 uekent.hatenablog.com カルテ記載と共に重要な技術として「プレゼンテーションスキル」があります。つまり人前で発表する技術のことです。医療現場で働いていると、多職種が集まって行…

No. 126 圧損傷(いわゆる褥瘡)について

圧損傷(いわゆる褥瘡)について 1961年にKosiakは、わずか70mmHgの圧力でも2時間連続で加わることで、ラットの筋肉に中等度の組織学的変化を生じたことを報告しました(1)。さらに1974年、Dinsdaleはせん断力が加わると血流低下を引き起こすために必要な圧力は…

No. 125 自動車運転再開について

自動車運転再開について 脳卒中やその他の病気になっても回復期リハ病棟退院後には自動車運転を再開したいと希望される患者さんが少なからずいます。退院後の生活の質に大きく影響することもありますので、可能ならば再開できるように支援したいですが、もし…

No. 124 リハビリテーションにおける超音波

リハビリテーションにおける超音波 INTRODUCTION 超音波は人間の可聴域の20KHzを超える音です。近年、画像検査としての超音波の使用は、筋骨格系および末梢神経系障害の評価に不可欠となっています。従来の画像技術と比較すると超音波は、その場ですぐに行え…