ミニレクチャー No. 37 リフィーディング症候群とは

リフィーディング症候群とは

 

第二次世界大戦後に解放された捕虜のなかに、十分な栄養補給を受けながら死亡する例がありました。長期間の栄養不良後、急激に高エネルギーの栄養摂取を行なったことで、低リン血症、低マグネシウム血症、低カリウム血症をきたし、発熱、痙攣、意識障害心不全、呼吸不全などを起こし死亡したのです。飢餓状態に適応し、なるべく栄養素を使わない体になっているところに、急激に大量の栄養が入ることによって引き起こされるこの症候群をリフィーディングrefeeding症候群といいます。

 

入院中の患者さんでは長期間低栄養状態となっている方も多く、栄養投与でリフィーディング症候群を起こす可能性があります。予防のためには、その発症リスクを認識することが何よりも重要です。高リスクの判断基準には以下のようなものがあります:

 

リフィーディング症候群 高リスクの判断基準

以下の1項目以上を有する

BMI < 16kg/m2

・過去3~6ヶ月で15%以上の意図しない体重減少

・10日間以上の経口摂取の減少あるいは絶食

・栄養投与を開始する前の血清カリウム、リン、マグネシウムのいずれかが低値

または以下の2項目以上を有する

BMI < 18.5kg/m2

・過去3~6ヶ月で10%以上の意図しない体重減少

・5日間以上の経口摂取の減少あるいは絶食

・アルコール依存の既往、またはインスリン、化学療法、制酸薬、利尿薬の投与

 

高リスクの患者さんでは、初期投与のエネルギーを制限し、あらかじめビタミン(特にビタミンB1欠乏に注意)や電解質が不足しないように投与します。そして、エネルギーの投与は現体重あたり10kcal/日から開始します。ただしBMIが14以下、または2週間以上ほとんど栄養を摂取していない超高リスクの患者さんでは現体重あたり5kcal/日から開始します。最初の2週間は血清カリウム・リン・マグネシウムの値や、心不全徴候の有無をモニタリングしながら、1日に100~200kcalずつ増量し、4~7日以上かけて目標値(体重あたり25~30kcal/日)まで増やします。

 

もしも、リフィーディング症候群が発症したことが疑われる場合は、直ちに栄養の投与を中止します。そして血液検査を実施しつつ、リン酸2カリウム製剤とビタミンB1を加えた電解質輸液の投与を開始します。その後はデータに基づいて電解質の補正を行いつつ、ガイドラインに従い慎重に栄養の投与を再開します。

 

参考文献

大村 健二, 葛谷 雅文:治療が劇的にうまくいく!高齢者の栄養 はじめの一歩 身体機能を低下させない疾患ごとの栄養管理のポイント, 2013, 羊土社.