ミニレクチャー No. 14 てんかん発作に出会ったらどうすればよいか?

てんかん発作に出会ったらどうすればよいか?

 

脳卒中や頭部外傷後の後遺症には様々なものがあります。麻痺や失語症、認知機能の低下など。てんかん発作も後遺症のひとつです。とくに、脳腫瘍やくも膜下出血、頭部外傷、皮質下出血、皮質を含む脳梗塞では、てんかん発作を生じる危険性が高いです。

 

脳卒中全体では5~20%のひとで起こり、脳出血のほうが脳梗塞よりも起こりやすいです。てんかん発作を生じやすい脳損傷部位というのがあって、皮質を含むテント上脳出血くも膜下出血、内頸動脈系の皮質を含む脳梗塞、中大脳動脈領域の皮質を含む広範囲な脳梗塞では危険性が高いです。

 

頭部外傷の場合は、抗てんかん薬を予防投与しても急性硬膜下血腫、外傷性脳内血腫、脳挫傷ではてんかんを生じやすいです。とくに、重度の頭部外傷例では15~35%で起こります。外傷後2年間に、生涯発生するてんかん80%が出現し以後頻度は減少し、5年間で50%寛解(完全に治癒)しますが、一部は難治性てんかんに移行するとされています。

 

上記の様な患者さんが回復期リハ病棟へ入院してきた場合、いままで起こってなくても、突然、てんかん発作を起こす可能性があります。回復期リハ病棟は、急性期の病院と比べれば緊急対応の必要な事態は少ないですが、この脳疾患後のてんかん発作は比較的多く経験します。患者さんが突然意識をなくし、四肢を痙攣させ、呼吸状態も不安定になる。その様な場面に初めて出くわすと、おろおろして取るべき対応ができない、という事態にもなりかねません。他の、心停止などの対応とあわせて、急変対応の勉強会・実技練習を企画して実施する必要があります。ここでは、てんかん発作時の心構えだけ説明します。

 

脳疾患後のてんかん発作は、からだの一部から痙攣がはじまり、次第に全身に広がり意識消失を伴う、というパターンで起こることが多いです。患者さんが立っていたり座っている場合は、転倒しないように寝かせます。嘔吐する場合は、嘔吐物を誤嚥しないように横向けに寝かせます。そうやって、患者さんの安全を確保をしつつ、発作の観察をします。からだのどの場所から痙攣が始まったが、眼球の向きはどうだったか、などです。これらの情報から、てんかん発作の焦点となった病変が推察することができるため、今後の治療・診断に役立ちますので、発作開始時にそばにいた人の情報はとても重要です。

 

そして何よりも大切なのは、人を呼び集めることです。患者さんへの対応と、必要な物品の準備、医師への連絡など、一人では絶対にできません。できる限りたくさんの人を集めて対応しましょう。

 

参考文献

武原 格:特集/症候性てんかんと自動車運転一最新の道路交通法改正も踏まえて一リハビリテーション医療の現場での自動車運転許可の現状. MB Med Reha 184:20-26, 2015.