ミニレクチャー No. 10 回復期リハでのSTの役割

回復期リハでのSTの役割

 

STSpeech Therapist 言語聴覚士 は、口に関する機能のスペシャリストです。ひとつは円滑なコミュニケーション、もうひとつは、安全で楽しい食事です。コミュニケーションのためにはことばを理解して、判断し、表現することが必要です。そのどこかが障害されるとコミュニケーションは成立しません。また食事は、生きていくために必要な栄養補給のみならず、人生の楽しみのひとつでもあります。どちらも人間的な生活には不可欠な要素です。

 

1. 失語症

失語症とは、脳のことばを扱う部分が損傷することで起こります。「聴く」「話す」「読む」「書く」の能力が様々な組み合わせや程度で障害されます。そのパターンは患者さんごとに異なり、ST失語症の評価を行いリハを実施します。また、最適なコミュニケーション方法(質問の簡略化、Yes/Noジェスチャー、選択肢の提示など)を皆に提案します。

 

2. 構音障害

主にのどや顔面の麻痺による、発声や発音の障害です。声がかすれたり、声が小さくなったり、発音が不明瞭になったりします。呼吸や舌・口の運動にかかわる筋肉のトレーニングを行います。

 

3. 高次脳機能障害

脳の傷害でおこる、コミュニケーションに必要な「判断」の部分の障害です。適切な判断が下せない状態です。以下のような症状がみられます:

・注意障害―-ぼんやりしている、危険に気づかない、集中できない、左側に気づかない

見当識障害―-時間や場所がわからない

・記憶障害―-新しいことを覚えられない、約束を忘れる

・失行―-道具の使い方がわからない、排泄や更衣の手順を間違う

・人格の変化―-怒りっぽくなった、無気力になった

・病識の欠如―-病気・障害があることを理解しない

見た目では分かりづらいですが、人間らしい生活が失われる障害です。また、入院中には問題にならず、退院してから実際の社会生活の場に戻ってはじめて障害に気づくことも少なくありません。STは様々な検査を行いどのような障害があるか評価し、改善のためのリハを行いつつ、周囲の人への説明、対処方法の助言なども行います。

 

4. 摂食・嚥下障害

食べ物を食べる一連の過程に何らかの障害がある状態です。嚥下内視鏡や嚥下造影検査などの検査や、実際の食事場面の評価をもとに、患者さんが安全に食べられる食事の形態を決定します。また食べるために必要な機能のリハも行います。